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古都、平城京の風薫る世界遺産 薬師寺(後編)

薬師寺での食事

朝は毎朝、茶粥をいただきます。わたしが来た昭和25年ころは白粥でしてね。余計めに炊いて、残ったらあくる日もですから、最後は糊みたいになっていました。(笑) それで、ある時に茶粥の炊き方を習いましてね。サラッとした、お茶漬けよりちょっとやわらかいようなご飯で非常においしいんですよ。お茶は番茶です。先にお茶を沸かしておいて、洗ったお米を入れて沸騰したら溢れないようにかき混ぜながら、やや芯があっても硬いめくらいで火を止めて。食べる頃にはちょうどサラッとしたお粥ができます。 昨日(11月13日)は法相宗の宗祖、慈恩大師(じおんだいし)の命日で、薬師寺と興福寺が交互で法要しているんです。今年は薬師寺でやって来年は興福寺でやるんです。そのときに必ず出てくるのはけんちん汁。これは各坊さんの奥さん方が集まって一日前から準備して、大根、牛蒡、椎茸、芋、油揚げ、豆腐を入れて。それはおいしいですよ。

わたしが入寺した頃は物のない時代でしたが、お寺ではご飯は意外と多く食べられたんです。ご飯のおかわりは出来たんですが、おかずは限られていました。たまにじゃが芋と油揚げのカレーライスもでました。他は椎茸丼ですね。椎茸を焼いて、生姜醤油にひたして、どんぶりのご飯のあいだに入れて、また上にも椎茸を乗せます。これはお客様にお出しする特別な料理です。お客様が来られた時にだけ食べられるご馳走でした。夏休みは、昼は毎日素麺です。保存が悪いもんだから虫がついていたりするんですよ。それでも食べようとしたら、その虫だって動物性たんぱく質やと言われました。(笑) それから、まぜご飯といいますか、色ご飯といいますか。野菜をいっぱい入れて、人参、牛蒡、芋とか。そういうご飯の時もありました。味つけは醤油を入れてかき混ぜて。そのご飯の場合は他におかずはありません。お汁があるだけです。お汁の具は油揚げや豆腐、菜っ葉ですね。精進料理ですから卵も入れません。正月になると、一日目は味噌汁のお雑煮なんです。二日目はすまし汁のお雑煮。三日目は小豆粥のお雑煮なんです。夜通しお参りしますからお腹空きましてね。お餅をいっぱい食べました。皆で「今日何個食べた?」という具合に競争しながら。大きなお椀にいっぺんに5つくらい入れて、ひたすら食べました。(笑)

子どもの頃の話ですが、岐阜に住んでいた当時、4つか5つのときにおじいさんがたててくれたお抹茶を初めて飲ませてもらったんです。ピンク色をしたようかんを食べて、そのあとお抹茶を飲んだんです。・・・うまいなぁ・・・と思いましたね。お抹茶の味とようかんの味がマッチして、子ども心にお抹茶がなんとも言えなくおいしかったです。泡立ったお茶なんて飲んだことなかったからね。普通、子どもはお抹茶なんて好みませんけどね。それから何年も経って奈良に来てから、お抹茶が出て、「あ、これだな。」と思いました。初めて飲んだときはお抹茶という言葉も知りませんでしたから、こちらへ来てそれがお抹茶と知りました。久しぶりにいただいたそのお抹茶もまた、美味しかったです。

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