トップ > 賢人の食と心 > 祝御遷宮 伊勢神宮一覧 > 【特別企画】 祝御遷宮 伊勢神宮(内宮編)

内宮の宮域は約5500ヘクタールございまして、そのほとんどが山です。これだけ森が深いと動物たちも棲んでおり、夜になるとよく出てきます。神主が詰めている建物があるのですが、そこは24時間必ず誰かがいるようになっていますので、私も夜にそこで勤めておりますと、ムササビの鳴く声を聞くことがあります。 夏などは、川が近いということもあり、以前は夜のおつとめをしている最中に、蛍たちの光で障子が光ったり消えたりすることもあります。

玉砂利の音だけが心地よく耳に響く、木漏れ日のさす樹木の密集した静寂の「杜(もり)」の道を歩んでいると、自ずと心身が洗われるような神妙な心境に誘われます。やがて、御正宮の石段下につきました。

御正宮の石段の下にある建物は、「御贄調舎(みにえちょうしゃ)」と言いまして、神様にお供えする鰒(アワビ)を調理する場所です。他の神饌(しんせん:神へのお供え物)は、忌火屋殿で調理をして直接お供えに行くのですが、鰒だけはこの場所でお祓いをしたあと最後の調理を行います。奥には石積みがあり、調理をする際にそちらまで豊受大御神様にお越しいただいて、様子をご覧いただきます。豊受大御神様は食の神様ですから、最後に食を司る神様としてお供えするものをご確認いただいた上で、天照大御神様にお供えをしております。 この御贄調舎の前にある結界は「蕃塀(ばんぺい)」と言い、御正宮のいわゆる目隠しで、ここから先がいよいよ天照大御神様が御鎮座されている場所ということになります。

撮影が許可されているのは石段の下まで。御正殿は最も清浄なる内院にあり、瑞垣(みずがき)、蕃垣(ばんがき)、内玉垣(うちたまがき)、外玉垣(とのたまがき)、板垣、の五重の御垣に囲まれています。一般の参拝者は、30段余りの石段を上がって外から2番目にあたる外玉垣南御門の前まで進んで祈りを捧げます。御祭神は「天照坐皇大御神(あまてらしますすめおおみかみ)」。皇室の御祖神で、日本国民の総氏神です。二拝二拍手一拝で手を合わせ、静かに感謝を捧げます。その昔、神宮を訪れた西行法師は、「なにごとのおはしますかは知らねども かたじけなさに涙こぼるる」という句を詠みました。御正宮の前で祈りを捧げ終わると、誰もがそのような言い様のない感情を覚えるのではないでしょうか。

御正宮から荒祭宮(あらまつりのみや:内宮の第一別宮)に続く参道に、御稲御倉(みしねのみくら)がございます。神宮神田(じんぐうしんでん)で9月に「抜穂祭(ぬいぼさい)」という刈入れのお祭を行うのですが、そこで刈り入れた稲を貯蔵しております。「三節祭(さんせつさい)」(6月・12月の月次祭(つきなみさい)と10月の神嘗祭(かんなめさい))で使うお米を籾(もみ)のまま入れておきまして、お祭りの前に精米して用います。精米したお米は蒸してご飯にしたり、お餅にしたり、お酒も作ります。お酒は、大きなお祭りでは4種類をお供えします。そのうち「白酒(しろき)」は一般でいう「どぶろく」です。また「黒酒(くろき)」は、白酒に植物の灰を混ぜたものです。それから、「醴酒(れいしゅ)」または「一夜酒(ひとよざけ)」といいまして、これはお米に麹だけを入れて発酵させたもので、ヨーグルトのようにどろどろしています。それから、清酒。これは特別な技術が無いと作れませんので、これは特定の酒造業者から納めていただいております。ですから、この4種類のうちの3種類は神宮で獲れたお米を用いまして、神主が忌火屋殿(いみびやでん)にて作っております。また、こちらは「御稲御倉神(みしねのみくらのかみ)」という神様がお祀りされているお社でもあります。

御稲御倉と隣接いたします外幣殿(げへいでん※4 )は、20年に一度の建て替えが終わったところで、神明造(しんめいづくり※5 )の御殿の形を非常に間近でご覧いただけます。新しい檜の良い香りも感じられるのではないでしょうか。新しく建てられた棟持柱(むなもちばしら)は、桁(けた)が少し浮いて隙間が空いています。これは、鰹木(かつおぎ)が乗った屋根の重みで沈んで行くことを計算に入れ、20年間でぴったりと納まるように建てているのです。

 ※4 外幣殿・・・皇室からのお供え物や神宝(しんぽう)等が納められています。

 ※5 神明造・・・柱を直接地中に埋めて立てる掘立式で、総檜の素木造り。弥生時代の高床式の穀倉を原形としていると言われており、萱葺きの屋根の両妻にある破風が延び、屋根を貫いて千木となっています。御正宮は他の神明造と異なる独自の様式であることから「唯一神明造」といわれています。

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