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十日戎大祭の様子 (西宮神社提供)

十日えびす大祭

毎年、1月9日の宵えびすと10日の本えびす、11日の残り福の三日間で「十日えびす」というお祭りが行なわれます。9日には「宵宮祭(よいみやさい)」が行なわれ、その後、深夜12時に神社の門がすべて閉ざされます。そして、神職達は静かに忌籠(いごもり)をします。これは、清浄なところで身を清め静寂の時を過ごし、10日午前4時から執り行われます一番大切な「十日えびす大祭」に備えるためです。テレビなどでは福男選びで皆さんの走る姿をご覧になることが多いと思いますが、実はその前にとても厳粛にお祭りが行なわれております。

そして、大祭が終わった午前6時、御本殿にある大きな太鼓の音と共に赤門(表大門)を開き、「開門神事」が行なわれます。これは、十日えびす大祭にてお祭りをし、えびす様のお力が一番強くなられた福を一番に頂こうと皆さんが御本殿に走って来られるのです。

開門神事は、今では随分知られていますが、私が幼い頃はこの近辺の方が下駄なんかを履いて走っていたような、大変ローカルなお祭りでした。 6、7年前にテレビで放映して頂いたことで随分と来られる方が増えて、それまでは1,000人もおられなかったのですが、今は4,000人くらいの方がいらっしゃいます。ですから、参加される方にはくじ引きでスタートの位置について頂き、危険のないように考慮して開門神事を続けています 。

豆腐の串焼き (西宮神社提供)

お祭り前の過ごし方

西宮の慣わしでは、9日の晩には氏子さんも一晩家に籠り、精進潔斎をして、早朝に神社にお参りをしていました。そして厳粛な忌籠が終わったら、開門神事を境にして一転、賑やかに和気あいあいと十日えびすらしい雰囲気となります。 また、氏子の方々はお籠りをしている間に何をしていたのかということが江戸時代の文献に記されており、それによりますと、9日の夜は家で豆腐の串焼きを食べていたそうです。おそらく、今でいう田楽のようなものだったと思います。

熊野の新宮に神倉神社という火祭りで有名な神社がありますが、その火祭りの前日には氏子さん達は白いものしか食べないそうです。お米、大根、豆腐を食べ、当日は白い装束で山に登り、火をもらってたいまつにして降りて来るという慣わしがあって、それを考えますと十日えびすの夜に豆腐の串焼きを食べていたということは、清らかな白いものを食べるということに精進潔斎という意味合いがあったのではないかと思います。

逆さ門松 (西宮神社提供)

逆さ門松

西宮のえびす様は、1月9日の夜、白い馬に乗られて氏子町内を巡行されるという言い伝えがあり、氏子の方々はえびす様のお姿を見るのは非常に恐れ多いので、全部の戸を閉めて家の中で籠っていました。その時、家の門松の枝がえびす様に当たったら申し訳ないということで、えびす様が通られる時だけ松を逆さにして飾ったのです。非常に優しい氏子さん達の心がそんな風習を生んだのでしょうね。

今は門松を飾る家がほとんどありませんから、そういったこともほとんど行なわれていませんが、境内の御前ではお正月から十日えびすにかけて逆さ門松をして、昔の風習を伝えております。

おおぬさによるお浄め

御本殿に入る前のおはらい

十日えびすの際、拝殿前で神主がおおぬさ(白木の棒の先に紙垂をつけたおはらいの道具)を振ります。普段、ご祈祷などをされる時は御本殿の中でお座り頂いておはらいをしますが、おおぬさを目の前で振るのは身を清め、けがれをはらうという意味があります。ですが、多くの方がお越しになる時には、そういうことが出来ませんので、拝殿前でお清めをさせて頂いております。

毎年の事ですが、お越しになられた方々は一列に並び、神主が振るおおぬさの下を順番に通って行かれます。これは他の神社ではあまり見られないことかも知れませんが、非常に丁寧なことですね。神様に近付く前には身を清めないといけないという、日本人にそなわる清浄感のようなものが表れているように思います。

えびす宮総本社 西宮神社 ウェブサイト http://nishinomiya-ebisu.com/

西宮神社と言えば「十日えびす」ですが、近年はお正月も十日えびすと同じように多くの参拝者で賑わうそうです。御本殿とそれぞれの神社をお参りし、ちょうど回り終えたところにある「おかめ茶屋」。100年以上前から参拝客の休憩処として親しまれており、名物の甘酒は麹とお米で作られていて、とても温まる一品です。 後編は、えびす様にまつわる西宮神社ならではのお祭りと、境内の末社についてご紹介します。

(2013年11月取材・文 島田優紀子)

(後編へつづく)

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