守り続けていること

昭和46年の開業以来、今日まで仕入は一度も人に任せたことがありません。42年間、毎日自分で築地に通っています。自分がきちんと目利きをした納得の行く魚だけをお客様にお出ししたいという気持ちは絶対ですし、ずっと変わりません。全国から集まって来る魚介類の中から本当に良いものを見抜くには、毎日市場へ足を運んでいなければわからないことがあると思います。選んでいる間に、どれから仕込むかという段取りも出来ますしね。

ある日、市場を歩いていたとき、普段買い物をしていないのですが、たまたま通りかかったお店のおとうさんに声を掛けました。すると、その方は私の顔を見るなり、「あなた、古いですねぇ。私の父の代からですもんね。」とおっしゃるんです。お年は私と同じくらいでしょうか。続けて、「私も父の手伝いをしていた頃から長年ここで仕事をしていますが、あなたみたいに何十年も通っている人はまずお見かけしませんねぇ。嬉しくなりますよ。」と。お話したのはその時が初めてでしたが、古い人がどんどん減っていく中でそんな方がまだおられたというのは私も嬉しく思いました。

でも、何十年と築地に通っていても知らないことはまだまだありますし、教えられることもたくさんあります。そういう新しい発見に終わりがないというのも、この仕事の面白いところですね。

三重県産マグロ・大トロの漬けは大根おろしと山葵をたっぷりつけて。焼きハマグリ、優しい甘さの玉子焼き。

ひとつひとつ丁寧に仕度をされた、酢〆のコハダ。

うちの定番の品として、私は一番先に(酢〆の)コハダをお出しします。コハダは年中仕入れることが出来ますし、高級な魚ではありませんから、大衆店でも高級店でもそのお店の味付けが出来る魚じゃないかと思います。鮨は元々屋台で始まったとされていますが、その屋台が出来る前の江戸時代には、コハダ専門に「コハダや~コハダ」という掛け声と共に天秤を担いで売り歩いていたそうですから、そういう意味では江戸前鮨の原点と言えます。

そのコハダをうちの味に仕上げて、最初にお出しするようにしているのは、「うちの酢加減、塩加減はいかがですか?お口に合いますか?」と、言葉ではない会話でお客様に私の仕事をみて頂くということなんです。それがうちの定番として知って頂くようになって、よく来てくださる方にも最初にお出ししないと「あれ?何で今日はコハダが最初に出て来ないの?」って言われるんですよ(笑)。

名物、穴子の白焼き。スダチと塩でいただきます。

それから、穴子の白焼きもうちの定番のひとつになっていますが、穴子についてはこれまで本当に色々な料理を作って来ました。その中で、やっぱりこれが一番だとお客様に言って頂けるのが、この煮穴子の白焼きです。でも、定番になったのは良いんですが、穴子の旬は梅雨から夏にかけてですから、他の時期には仕入れに気を使いますし、仕度にも苦労しますね。

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