トップ > 賢人の食と心 > 第12回 中国料理界の重鎮が思う今の日本に必要な食育とは

第12回

親にこそ食育が大事な時代

今、食育が必要な世代は、子どもたちではなく親だと私は考えます。今の親は基本的な食事のマナーも理解していない人が多いです。食事のときに長い髪を束ねなかったり、足を組んだり、テーブルに肘をついて食べたり。食器を扱うのに片手で持っても平気。親が正しい作法をマスターしていないと、子どもはできなくて当然です。

子どもの好き嫌いは、親に原因があると私は思います。「嫌いなら食べなくてよい」ではダメ。親が頼りない! 子どもの好き嫌いに左右されない親の主体性が大事です。小さいときから料理をするのは最高の食育だと思います。自分で作ったものは積極的に食べるから好き嫌いがなくなり、わがままを言わなくなります。

子どもたちは、それぞれにすばらしい感性と可能性を持っています。子どもたちの秘めた能力を引き出すのが私たち大人の役割。大人がもっとしっかりしないといけませんね。

厳しい親のもとで育った強い心

私が8歳のときから両親が中華料理店「龍潭」を経営して、店の2階に家族で住んでいました。今振り返ると、両親の教えのすべてが食育だったと思います。幼いころから食事のマナーはもちろん、生活態度全般について細かく教えられました。私には父にも母にも甘やかされた記憶はありません。

小学2年、8歳からの調理場での皿洗いが私の料理人としてのスタート。灘高校の入学試験に受かった日に浮かれていたら父親に言われました。「おめでとう。今日から一彦は店のお手洗いの掃除係や」と。店の便器を磨いて、汚れていないか常にチェックして。いやいややっていましたよ。そんな親は偉いと思います。おかげで私は手洗いの掃除が苦痛ではありません。

子どものころは父親があまりにも厳しすぎて、本当の親だと認めたくないときもありました。あるとき父親に反発したら、「獅子は我が子を谷底に突き落とす。それで這い上がってこられなければそれまでや」と諭されました。私を厳しく育てたのは、私の力を心底信じてくれていたからなんだと思います。

食育大事典facebookページ
ページのTOPへ