トップ > 賢人の食と心 > 第12回 中国料理界の重鎮が思う今の日本に必要な食育とは

第12回

中国料理は火力が命ではない

私は両親が中国人と日本人でハーフだから、2つの国の「味の物差し」を持っています。ハーフだから両方の国の料理の良さと違いがわかり、この感覚が私の料理に活かせていると思います。見てもらった今日の料理教室の棒々鶏(バンバンジー)は日本風にアレンジしました。家庭で作りやすいからです。実はバンバンジーは本式で作ると40分以上かかる料理なんです。

料理は今の時代の生活に応じて、誰もができるように工夫しないといけないと思います。私は特殊な調味料は必要なとき以外使いません。今日の料理教室でも中国料理の調味料は豆板醤だけ。家庭で中国料理をおいしく仕上げるために、一番大事なのは「火の扱い方」です。「中国料理は火力が大事」と言われていますが、それは一度にたくさんの料理を作る料理屋の場合。家族4、5人分なら家庭用のコンロでも十分に調理ができます。私の料理教室で使うのは家庭用のコンロ。しかし、ちょっとしたコツがあります。炒め物、煮物、揚げ物は必ず鍋に蓋をすること。蓋をすると鍋が熱を蓄えて食材にうまく火が通ります。

家庭でも失敗しない調理法を

世間には間違って伝わっている料理の知識がたくさんあります。例えば揚げ物の油の温度。数年前までテレビや料理本では180度と言われていたでしょう。実は165~170度が適温です。しかし私の教室では、家庭用に考えた新しい方法で、常温から揚げます。常温の油から揚げたのと165~170度で揚げたのを食べ比べてみると、常温のほうが油の切れが良くておいしいとわかりました。常温の油の中に食材を入れて火をつけますが、鍋に入れる油の量は鍋底から1cm程度です。ポイントは温度を上げるために蓋をすること。ただし、このとき鍋蓋の内側には水滴が付くので要注意。こまめに拭き取ってください。

これまで発信されてきた中国料理の情報は、プロが実践しているプロ目線が多かったのです。私の料理教室はあくまで家庭の主婦目線。料理本も昔は完成写真だけでしたが、近ごろはプロセス写真で途中経過を紹介しています。写真の方がわかりやすいですね。時代の流れは「スピード」と「簡単」と「エコクッキング」。失敗せずにおいしくできることを大事にしています。

100歳まで現役でいるために

私は今年の12月で81歳になりますが、今も元気に頂いた仕事を楽しくこなせているのは、食のおかげだと思います。病気になったときは医者の言うことを聞きますが、普段はサプリメントも薬も一切飲みません。風邪かなと思ったときは生姜湯で大丈夫。中国料理で良かったと思うのは、薬膳が勉強できたことです。日ごろの勉強とその経験からまとめた「程さん流健康養生訓十箇条」を長年守っているおかげで元気に仕事を楽しんでいます。

「程さん流健康養生訓十箇条」では、まず朝はコップ1杯の水を飲みます。ペットボトルの水は動きがなく、中国薬膳で大事な「気」がないから水道水を。すると便秘が解消して腸が清潔になり、善玉菌が増えて悪玉菌は減るので便とおならの悪臭が消えます。朝食は腹八分目。15分間以上かけて食べると、満腹中枢を刺激します。食事では緑野菜を多く摂取し、赤・黄・茶の野菜もバランスよく、効率よく摂ります。特に緑野菜は赤血球になり、血流を促して体の隅々に酸素を運び冷え症対策に。冬も薄着でへっちゃらです。

重い中華鍋を振るためには筋力が必要なので、適度な運動は欠かせません。家でテレビを観るときは10ポンドの鉄アレイを持って筋トレをしています。関学入学時の18歳から続けているジャスボーカリストとしての活動もまだまだ現役。「歌う料理人」は楽しいです。私の目標は100歳まで料理人として世の中の役に立ち、若い人たちに私が学んだことを伝えること。まだまだがんばります!

(2018年4月取材・文 岸本恭児)

*次回の「賢人の食と心」も是非ご期待ください。

食育大事典facebookページ
ページのTOPへ