揖保乃糸資料館 そうめんの里

穏やかな風土と良質な原材料が手に入ったこと、そして何より製造者たちの真面目な勤労に支えられ、播州の地で育ってきた「揖保乃糸」。1本1本に刻まれた歴史と文化、味の秘密を探るべく、その産地を訪ねました。

熟練した職人さんによる小分け作業の実演。間近に見る手さばきは目にも鮮やかです。

厳格な品質管理で変わらぬ味を。

播州手延そうめん揖保乃糸は、西播磨地域を代表する特産品。冬に雨が降りにくい乾燥した気候と、原材料となる赤穂の塩や揖保川の清流に恵まれたことに加え、播磨平野では良質な小麦粉の栽培が盛んだったことから、兵庫県たつの市を中心に一大生産地として発展しました。独特のコシとのど越しの良さで多くの人々に愛されています。 その製造を行っているのが兵庫県手延素麺協同組合。そうめんづくりは昔、主に農家が閑散期の副業として行っていました。現在は近隣地域にある450軒ほどの家庭が組合に属し、組合規定に沿った製法で伝統の味が守られています。かつてはすべて手作業で大変だったそうめんづくりも、一部を機械化することで作業の辛さを軽減し、均一の品質を保持。味も一段と良くなりました。出来上がったそうめんは検査指導員が組合家庭を一軒ごとに回り、香りや見た目などを厳しい目でチェック。格付検査を終えた後、湿度と温度を保った専用倉庫で熟成され、出荷の時を待ちます。

そうめんの歴史をさかのぼるとたどり着く索餅は形がユニーク。まるで和菓子のです。

見て触れて知るそうめんの奥深さ。

揖保乃糸資料館「そうめんの里」は、地域の小学生たちが学習に訪れたり観光客などに人気のスポット。ガイドによる定時ツアーも開催され、日本のそうめんの歴史や文化について触れることができます。そうめんの原型となったのは約1200年前に生まれた索餅(さくべい)と呼ばれるもの。一見すると餅に似ていて、酢やもろみにつけたりあずきと一緒に食べていました。索餅は高級品で、天皇や貴族が客をもてなす際に振舞われていたそうです。その後、形状が細く長くなるにつれ、「さくべい」が「さくへい」「さくめん」「さうめん」「そうめん」と名前も変化していきました。 江戸時代に入り庶民の味として広がると、1本の長さはなんと2mに。腕に巻きつけたり耳にかけたり、2階に駆け上がりながら食べていたという興味深いエピソードも残っています。展示室では、実際に使われていた道具と人形を使って1970年代の揖保乃糸そうめんづくりの作業風景を再現。職人による実演や生地を引き伸ばす作業が模擬体験できるコーナーなどもあります 。

そうめんを束ねる帯は、製品の情報を知る一つ。赤帯より黒帯のほうが麺は細く、紫帯は国産小麦を使用。

帯に刻まれた味のヒミツ。

揖保乃糸は小麦粉の質や麺の太さ、製造時期などによっていくつかの等級に分けられ、等級別に帯のデザインや色にも違いがあります。スーパーなどでよく見かける赤帯の「上級」は最も親しまれている味。全生産量の80%を占めています。一方、上質の小麦粉を使用し、組合が選抜した熟練製造者により生産されている「特級(黒帯)」という最高級品や、管理の行き届いた倉庫で1年寝かせた「ひね」、2年寝かせた「大ひね」など貴重な味も。それぞれに食感や風味が異なるので、食べ比べてみるのも一興です。館内レストランでは、そうめんの定番メニューはもちろん、洋風や中華風に仕立てた変わりダネもスタンバイ。他では味わえないそうめん料理は、家庭で楽しむときのヒントにもなりそうです。

そうめんの里のおすすめ

龍の夢中華麺

揖保乃糸と同じ手延べ製法で作ったもちもちとした食感の中華麺。売店ではお土産としても人気。

そうめんバチ

そうめんを上下の管に掛けて細く引き伸ばした際、切り落とす下管の部分がバチ。そのまま吸い物などの具に。

冷麦

毎年5月、9月に製造される冷麦。そうめんとはひと味違ったしっかりとした歯ごたえが満足感を高めます。

鯛めん

たつの地方に古くから伝わる郷土料理をアレンジした名物メニュー。館内レストランでいただけます。

DATA:

揖保乃糸資料館 そうめんの里

兵庫県たつの市神岡町奥村56

TEL 0791-65-9000

営業時間 9:00~17:00(入館は16:30まで)

休館日 月曜(祝日の場合は翌日)

展示室は有料/大人300円、中高生200円、小人100円

URL http://www.ibonoito.or.jp/soumennosato/

(2014年12月 現在)

そうめんの里 からのメッセージ

最近は若い人のそうめん離れが進んでいますが、資料館でそうめんのことを知ってもらうことでもっと身近に感じてもらえるのではないかと思っています。売店では、こちらでしか買えないものやスーパーなどでは手に入りにくい商品も並んでいますので、ぜひお立ち寄りください。

【取材レポート】
そうめんづくりの2日目に行われる小分け作業(そうめんを乾燥させる作業)を体験させていただきました。2本の箸とはたと呼ばれる木製の道具を使って、160cmほどに麺を細く長く伸ばしていきます。麺は乾燥させると切れてしまうため、手早く行うのがコツ。ぐっと伸ばすと手ごたえが感じられ、コシの強さが伝わります。箸を麺の間に差し込んで1本1本をさばいていく工程は思った以上に気を遣うもの。職人さんの丁寧な手仕事があってこそ、あのおいしさが生まれるということを改めて実感しました。