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パン好きの間で、一度は食べてみたいと名前が上がるほどの名店「フロイン堂」。地元の常連さんだけでなく、全国からその味を求めるお客さんが後を絶ちません。「今日もぼつぼつ終わりやね」。二代目の善之さんは夕方、空っぽになったパン棚を見て、安堵の笑顔をのぞかせました。

煤の付いた姿に歴史を感じるドイツ窯。空襲と震災にも耐えた頑丈な造りが自慢です。

先代から守ってきた手作りの味。

フロイン堂のパン作りは、創業以来すべて手作業で行われています。材料は小麦粉、バター、砂糖、塩、自家製の天然酵母と水。極めてシンプルながら「うちのパンには独特の風味があるんです」と誇らしげな善之さん。先代であった父親のレシピに忠実に焼き上げる食パンは、外はパリッと香ばしく、中は弾力があり、きめ細やかでしっとり。小麦の香りも豊かです。トーストすれば、カリッサクッと心地良い歯ごたえで、また違った印象に。店先にはカンパーニュやバゲットなど気取りのないパンが並び、今どきのベーカリーのような派手さはありません。準備から焼き上がりまですべて人力のため、1日に焼ける数にも限りがあります。「家族総出で一生懸命働いても、食パンなら1日100本が限度。機械化すれば大量生産もできますが、パン一つ一つへの思い入れを大事にしたいので手作業にこだわっています」。善之さんの職人気質な一面が、80年以上変わらない味を守っています。

古い道具に囲まれた作業場。パン型は特殊な黒鉄で作られ熱の伝導が良く、窯との相性もぴったり。

パン作りの原点を大切に。

善之さんが受け継いだのはレシピだけではありません。店は昔の佇まいのまま。地下にある作業場では、先代からのドイツ窯が現役で活躍しています。「うちの窯は馬力があるので直火は不要。朝にガス火で温め、余熱でパンを焼きます。素材の持ち味を引き出し、赤銅色の美しい焼き目が付くのはこの窯のおかげなんです」。使い込んで穴が空いたパン型への愛着もひとしお。道具がイキイキと働き続けられるよう、1日の終わりには感謝を込めて手入れすることを忘れません。先代が残した数々の「パン作りの原点」を、宝のように守ってきた善之さん。それは、先代のパンに対する思いの深さを知っているからこそ。「戦後の食糧難のときに親父は畑を耕して小麦を栽培し、麹などをイースト代わりにパンを焼いては食べ物に困っていた近所の人に配っていました。そんな親父のパンを愛してくれる人がたくさんいたんです。うちには四世代に渡る常連さんがいらっしゃいますが、ありがたいことに『次の世代にもここのパンを食べてほしい』と言ってくださって。求められることはありがたいこと。私らも親父の残した原点を忘れず、がんばらんといけませんね」。

翌日の材料になる小麦粉。この中に副材料を加えると70kgほどに。14時に焼きあがるパンも夕方にはすっかり空っぽになってしまいます。

100点満点のパンを目指して。

パン作りは手とり足とり教わるものではなく、感性が必要という善之さん。何十年とパンを焼いていても、100点のパンにはなかなかお目にかかれないそうです。「作り手の心身のコンディションも味に影響してきます。それに加えて素材の状態や気候を毎日ベストな条件でそろえることは簡単ではありませんから、その日その日で試行錯誤。親父は『パン作りは毎日が素人や』と言っていました」。三代目となる息子の隆さんも、日々の気づきや発見にパン作りの醍醐味があると語ります。「稀に自分たちでも驚くくらい出来の良いパンが焼きあがるんです。そんな日は売るのが惜しいくらい(笑)」。昨日のパンはおいしかったよとお客さんから声が掛かれば、作り手としては満足。「ちょっと偉そうですけれど、これが本物のパンやと言えるものを作り続けていきたいですね」。善之さんはフロイン堂のこれからを高らかに語ってくれました。

フロイン堂のおすすめ

食パン

全国に多くのファンを持つ店の看板商品。一度食べると忘れられない深い味わいが特徴。一晩寝かせて翌朝食べるのがベスト。

ビスケット

パンと同様ドイツ窯で焼き上げています。懐かしくやさしい甘さが人気。他にパルミアやバターケーキなどのお菓子もあります。

DATA:

フロイン堂

兵庫県神戸市東灘区岡本1-11-23

TEL 078-411-6686

営業時間 9:00~19:00

定休日 日、祝

(2015年4月 現在)

 

フロイン堂 からのメッセージ

突然ご来店いただいてもパンが売り切れていることがあります。パンは当日分のみ予約が可能です。ご来店当日の9時から電話で予約をお受けしていますので、ご希望のものをお知らせください。

【取材レポート】
先代が亡くなってすぐに店を引き継いだ善之さん。それまではサラリーマンをしていました。パン屋の道に入る背中を押してくれたのは、先代を看取ったお医者さん。「うちのパンのファンでいてくださったんでしょう。なんで君は親父さんの焼いているパンを焼かんのやときつく言われました。君は好きな仕事をやっていてそれでいいのかもしれんけど、親父さんのパンはどうなるんやと。この言葉で踏ん切りがついて、継ごうと思いました」。最初のころは常連さんたちに「味が違う」と叱られたことも多かったそうですが、だからこそ勉強ができたと感謝を言葉にします。お客さんたちの熱い思いに支えられて今があるフロイン堂。胸を打つ印象深いエピソードでした。

 

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