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神戸は関西の洋食文化発祥の地。明治時代より港町として繁栄を遂げ、異文化交流の中で日本独自に進化した洋食は、モダンを好む人々の間に浸透しました。通りを歩くと、今も多くの老舗店が看板を掲げ、長い歴史の中で培った味を届けています。その一軒であるグリル一平を訪ねました。

本店の味を引き継ぐ元町店、三宮店は、基本のレシピはあっても店舗ごとの客層に合う味付けに変更しているそう。

厨房から伝わるライブ感もごちそう

街の移り変わりに寄り添いながら64年。グリル一平は、世代を超えて親しまれる懐かしい洋食を作り続けてきました。昼も近づいた11時30分。営業開始と同時に開店前から並んでいたお客さんたちがどっと押し寄せ、あれよあれよという間に満席に。客席のすぐそばにあるオープンキッチンからは、シェフたちの熱気が伝わってきます。ジュッと油を熱する音、香ばしい香り、フワッと立ち上る湯気が五感を刺激し、おなかは“グーッ”。待ちに待った料理をひと口食べた瞬間、どの席にも笑顔の花が咲きます。「お客さんたちのニッコリを見るのが何よりうれしい」と目を細めるのは、3代目オーナーシェフを務める山本隆久さんです。

厨房にオーブンはなく、6つのガスコンロがフル稼働。調理は機械任せにせず、人の勘を頼るのがポリシー。

オムライスのおいしさの裏側

同店の看板メニューといえばオムライス。ほとんどのお客さんが注文し、多い時で1日100~120食は出ると言います。特徴はごはんの粒が透けるほど極薄に巻かれた卵。薄く焦がさず、かつ半熟の部分を残すという神業は簡単に習得できるものではありません。「うちではこのオムライスが修業の登竜門。どんなに勘が良くても、お客さんの前に出せるようになるまでには最低3年はかかりますよ」。厨房におじゃまし、山本さんの技を見せてもらいました。熱したフライパンにバターを入れ、ごはんとハム、秘伝のレッドソースを加えてさっとあおってライスは完成。間髪入れずにLLサイズの卵半個を流し込み、その上にライスを乗せてくるりとひっくり返せばあっという間にオムライスが出来上がりました。鮮やかな手さばきで、かかった時間はわずか50秒。そんな山本さんでもコンディションによってはうまくできない日があり、オムライスを作るときはいつも緊張感を持ってフライパンを振るそうです。

「厨房や調理道具は常にきれいに整っていること。手入れが行き届いていないと味も雑になります」と山本さん。十数年も使い込んだ鍋はすっかり底が薄くなり、丸く変形してしまったものもあります。

デミグラスソースに込めた愛情

オムライスやハンバーグなどさまざまな料理の味の決め手となっているのが特製のデミグラスソース。1週間分を5日間かけて仕込む手間ひまのかかったものです。艶やかなブラウン色とトロリとした濃度を出すのに必要な工程だけでおよそ半日。小麦粉とラードを焦がさないように注意を払い、火加減を微調整しながらじっくりと炒めていくのは、熟練の技と根気のいる作業です。長時間の調理にも耐えられるよう本店の鍋は特注品。鍋底は通常の2倍もの厚みをもたせ、温度が均一に通るように工夫が施されています。愛情がたっぷりと込められたデミグラスソースは、酸味、甘み、ほのかな苦味が感じられるバランスの取れた味。その奥深さに老舗のこだわりが凝縮されています。

グリル一平のおすすめ

オムライス

とてもシンプルな昔懐かしい味。この一皿を求めて遠方から足を運ぶ人もたくさん。しっかりと巻かれた卵と空気を含んだライスが口の中でほろりとほどけて絶品。

ハンバーグ・ステーキ

ジューシーなハンバーグにデミグラスソースがたっぷり。アツアツの鉄板からふくよかな香りが立ち上ります。ハート型の目玉焼きがかわいらしい。

スパゲティ・イタリアン

山本さんいわく「うちのパスタはナイデンテ」。アルデンテとは対極にあるうどんのようにやわらかい麺が独特。濃いめの味付けは、ごはんにも合います。

DATA:

グリル一平 新開地本店

兵庫県神戸市兵庫区新開地2-5-5-203

TEL 078-575-2073

営業時間 11:30~21:00

定休日 毎週木曜(祝日時は水曜振替)と毎月第3水曜

(2016年4月 現在)

 

グリル一平 からのメッセージ

洋食にはフレンチやイタリアンほどの華やかさはありませんが、私たちはいつ食べても感動してもらえる新鮮な味をお客様に届けたいと思っています。同じメニューでも、本店、元町店、三宮店とそれぞれに味の個性が異なるので、ぜひ食べ比べてみてください。

【取材レポート】
創業者である山本さんの祖母が、神戸でトップクラスのシェフたちを集め、洋食店をオープンさせたのがグリル一平の始まり。当時の洋食は高級料理で、記念日やハレの日に食べるものでした。そのなかでテーブル100席、座敷、VIP客専用のお忍び階段まで備えた同店は他と一線を画す一流店。今ではよく目にするステーキを鉄板に乗せて運ぶスタイルも、料理に特別感をもたせるためにと、グリル一平で生み出されました。阪神淡路大震災では店舗が大きなダメージを受けシェフたちも去り、一時は閉店に追い込まれたことも。そんな窮地を救ったのは常連客でした。コンテナ5つを淡路島から運んでくれ、営業を再開させることができたそう。長い歴史の中で多くの人々に支えられてきた、今も変わらない味があります。

 

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