Reve do chef(レーブドゥシェフ)

神戸は洋菓子店の激戦区。全国展開する有名店も多く、昔から地元の人に愛されている老舗店も数えきれないほどあります。その中でもレーブドゥシェフは、舌の肥えた神戸っ子たちも一目置く名店。本店は郊外にありますが、他県からも買いに訪れる人が絶えません。

Reve de chef(レーブドゥシェフ)の店名は「シェフの夢」という意味。扉の向こうではシェフ渾身のとっておきのスイーツたちが迎えてくれます。本店(名谷店)と北六甲店ではカフェスペースを併設。イートインでしか味わうことのできないパフェやランチもあります。

ケーキは幸せを運ぶお菓子

ガラスのショーケースを彩るのは、イチゴやメロン、オレンジなどフルーツがたっぷり乗ったスイーツたち。キラキラとジュエリーのように輝くケーキを前に、お客さんたちは笑顔の花を咲かせます。

「スイーツはうれしい時に食べたいし、仲良くしたい人に差し上げる喜びの食べ物。仲間や家族と一緒にテーブルを囲んで食べるケーキはおいしいですよね。洋菓子店は皆さんに幸せを運ぶ“幸せ産業”なんですよ」とにこやかに話すのは、オーナーシェフの佐野靖夫さんです。

和菓子店の三男として育ち、小さなころから甘いものが大好き。北海道の牧場で働いていたとき、しぼりたての牛乳の上に浮いた生クリームをぺろりとなめて感動を覚えたのが、パティシエとして歩むきっかけとなりました。

夏場のおもたせやお中元に人気のアイスクリームやジェラート。フレッシュなおいしさが口いっぱいに広がります。東日本大震災後、佐野さんは気仙沼へ。地元の食材を使って子どもたちとケーキを作り、笑顔の輪を広げる活動にも尽力。

素材と手間は愛情を込めて

1981年の創業以来、佐野さんが徹底してこだわってきたのは素材。スイーツに適した素材があると聞くと、全国各地に足を運んで自分の目と舌で見極めます。秋の訪れを告げる丹波栗の贅沢パイには、契約農家から仕入れる立派な丹波栗をふんだんに使用。イチゴは兵庫県のブランド種である二郎イチゴに限り、太陽のエネルギーを浴びた露地栽培の完熟したものだけを選果。時には畑に社員を伴って収穫の手伝いも行います。

新茶のダックワースなどに用いる抹茶は、宇治の提携茶園で生育状態を確認。自ら新茶の入札会場に視察へ行くほどの熱の入れようです。カボチャやトウモロコシも市販のペーストを使うのはタブー。生のものを丸ごと蒸して、野菜の甘さをそのまま活かしています。
手間がかかる仕事をあえて選ぶのは、自分の気に入った味をお客さんに届けたいからと佐野さんは言います。

ひょうごの匠や神戸マイスターに認定されている佐野さん。兵庫県洋菓子技術専門学校の校長も務め、後進の育成にも力を注いでいます。

「イメージは高級、価格は大衆」

コンフィチュールやアイスの美しく鮮やかな赤やオレンジは、素材そのものがもつ自然由来の色。まるでフルーツそのものを食べているかのような濃密さも特長です。多少原価はかかっても、素材は惜しみなく使うのも佐野さんのポリシー。不自然なものを一切加えることなく丁寧に自家生産するスイーツは、妊婦さんや子どもたちも安心して口にすることができます。

店頭のスイーツは種類が豊かでつい目移りしてしまうほど。一番の看板商品は何かと尋ねると「すべてに思い入れがあるから決められませんよ」と笑う佐野さん。それでも大ヒットを挙げるなら、シュークリームは外せないそう。やわらかなシュー皮の中にはこぼれんばかりのカスタードクリーム。黄身を多く使い上質な生クリームを加えて仕上げ、濃厚でありながら後口に甘さは残りません。「食べ物は体を作る大事なもの。だから私はこれからも本物を追求していきたいと思っています」。すっと体に染みわたるピュアな味は、今日もたくさんの人の元へ幸せを運んでいます。

レーブドゥシェフのおすすめ

パパプリン&ママプリン

北海道産のクリームを使い、トロリとなめらかな口当たりのパパプリン。ママプリンは淡路産の放し飼いで育った鶏が産んだ自然卵を使用。

新茶のダックワース

石臼で挽きたての抹茶を加えているため風味が高いのが特長。苦みや渋みはなく、割ると中は鮮やかなグリーン色。

シュークリーム

世代を超えて人気のシュークリーム。たっぷり入ったクリームは後を引くおいしさ。添えられたアイスは二郎イチゴを使った果汁率55%のリッチな味。

DATA:

レーブドゥシェフ 名谷店

兵庫県神戸市垂水区名谷町321-1

TEL  078-706-5080

営業時間 10:00~20:00

(カフェ:10:00~19:00オーダーストップ)

URL http://www.revedechef.co.jp/

(2016年8月 現在)

レーブドゥシェフ からのメッセージ

作り手である私たちは、安全でしっかりとした良いものを皆さんに食べてもらうことが何より大事だと思っています。世の中には簡単で手軽に使える合理化食材があふれていますが、当店では絶対に取り入れることはありません。パッケージの裏側にある食品表示を見て、ぜひ本物を選んでください。

【取材レポート】
小さいころから手先が器用で、味に敏感だった佐野さん。実家の和菓子店の手伝いで、学校が休みの日は12時間かけてあんこを炊いていたことや、食通の父親にいつもいいものを食べさせてもらっていたことが、今のケーキづくりにつながっているそうです。「お客様には感謝の気持ちを大事にしたい」と、佐野さん流のおもてなしにはセンスが垣間見えます。本店では雪の降る日はカイロを、雨が降ったときはタオルをお客さんに手渡すことも。暑さに汗が噴き出たこの日は、出入口にほんのりオレンジの風味を乗せた冷たい水がさりげなく用意されていました。行き届いた心配りにお客さんもニッコリ。気持ち良く店を後にされていました。