トップ > 食育訪問 >本家 きむらや

メインタイトル

明石市民の台所・魚の棚は、瀬戸内で獲れた旬の魚や乾物を扱う商店が軒を連ねています。今年もそろそろ年末の売り出しが始まるころ。威勢の良い声が飛び交い、通りは買い物客であふれます。そんな活気ある街を象徴するような、賑わいの絶えない一軒を訪ねました。

オープン前から行列ができ、多いときは1日400枚焼くことも。道に面したガラス窓からは焼く様子がのぞけます。店内のテーブルやイスなどは昔のまま。お客さんから「変わらんといてや」と念押しされているとか。

庶民の気軽なおやつとして

明石焼の店の最古参として看板を守ってきた「本家 きむらや」。開店前や昼時ともなれば「いつものあの味」を求めて人々が長い列をなします。4世代通い詰める常連さんや観光客に混じって、遠くふるさとを離れた人も懐かしさを求めてやってきます。アツアツを頬張りながら、きむらや4代目店主の衣川幸子さんと昔話に花を咲かせたり、思い出の味に感極まって涙を流したり。「うちの店はお客さんにとって実家。明石焼はおかんの作るごはんみたいなもん」と笑う幸子さん。いつ来ても変わらない味としつらえに、皆思いを寄せます。

きむらやは大正13年に店を構え、昭和30年代に今の地に移りました。それより以前は屋台営業で明石焼を販売。当時はもっとカジュアルで、出来立てを新聞紙や竹の皮に包み、さっと塩を振って手でつまんで食べるのがスタイル。手軽さが庶民にうけ、軽食やおやつとして地元に定着しました。

道南産の立派な一枚昆布。一度うま味を出すと捨ててしまうそうでもったいないと取りに来るご近所さんがいるとか。熱伝導に優れた銅製の焼き鍋で焼くのが明石焼の鉄則。きむらやではこまめに手入れをし、30年40年と使い続けています。

明石焼の「実は…」な話

屋台から店舗へと姿を変えてからは、街の人に愛される食堂となります。市場やフェリー乗り場に近かったことから、のれんを出すのは朝7時。仕事終わりの漁師や釣り人たちを温かく迎え、明石焼以外にもおかずや汁物が評判の店でした。

戦後のある日、うどんのだしを明石焼に添えて出したことが今の食べ方の原点。斜めの板に乗せて提供する形も、初代である幸子さんの祖父が生み出したものです。「板はじいちゃんが屋台のころから使っていて、そのときは下駄のように裏には2本の棒が渡してありました。出来立ての明石焼を銅板から外すための道具やったんですけど、あるとき、2本もあるんはじゃまやってことになって1本にしてもたんです。それでいつしかその板のままお客さんに出すようになったと聞いています」。こんな明石焼の秘話を聞くのも、きむらやを訪れる楽しみの一つです。

焼き上った明石焼は板に乗せてテーブルへ。「新聞紙に包んでいたころは文字が明石焼に移り、それも味わいだった」と4代目店主の衣川幸子さん。付けだしは炊き込みご飯や鍋にも応用できて万能。だしのファンも多く、一度に大量に買う人もいるそうです。

食べ方のバリエーションを楽しんで

明石焼は板に乗せることから、注文の単位は枚。「ほな1枚焼きましょか」と幸子さん。生地を流し込み、淡路・徳島産の茹でタコを投入すると、熱した銅板がジュッと音を立てます。生地にはたっぷりと卵を使い、沈粉(じんこ)と呼ばれるでんぷんの粉と小麦粉をブレンド。沈粉を加えることで、なめらかな口当たりとふっくらとした焼き上がりになります。生地の風味を高めるのは黄金色のだし。贅沢に道南産の1枚昆布を使い、2時間漬け置いてうま味を抽出します。「昆布は2代目のばあちゃんのときから絶対にこれ。破れてても半分にカットされてても不思議といつもの味にならんのよ」。生地の周りが固まって、ふちが上がってきたら返し時。銅板は繊細で先が鋭いと穴が空いてしまうため、菜箸でくるくるとひっくり返していきます。「明石焼は卵がベースなんで、たこ焼きより火の通りがええんよ。2回ひっくり返したらほら、もう出来上がり」。幸子さんの手際に見とれている間にアツアツが完成しました。「やけどに気ぃつけてね」。はやる気持ちを押さえてフーフーし、まずはそのままパクリ。焼き立ては空気を含んでふんわり。口の中でやさしい味がほどけます。おすすめの塩でいただいてみると、生地の甘みがくっきり。昆布とカツオがベースの付けだしに浸せば、うま味の相乗効果でいくらでも食べられそうです。素朴ながらこだわりが詰まった明石焼。本場でしか出合えない味をぜひ。

本家 きむらやのおすすめ

明石焼

きむらやの明石焼は1枚20個と他店よりやや多め。インターネットからも購入でき、家庭で店の味が楽しめます。

おでん

いりこと昆布でしっかりめに取っただしは、創業以来継ぎ足しで守ってきたもの。阪神淡路大震災で一度はダメになりながらも復活しました。

DATA:

本家 きむらや

兵庫県明石市鍛冶屋町5-23

TEL 078-911-8320

営業時間 平日 10:00~17:30頃

土・日・祝 9:00~17:30頃(仕込み分がなくなり次第終了)

月曜休み(月1回不定休で火曜も休み。詳細はHPにて)

URL http://honke-kimuraya.com/

(2016年10月 現在)

 

本家 きむらや からのメッセージ

店の雰囲気も明石焼の味も、昔のままであることがうちの店の誇りです。これからも変わらないことを大事に看板を守っていきますので、明石を訪れた際は、気軽にお立ち寄りください。

【取材レポート】
一歩中に入ると、まるで昭和のまま時が止まってしまったかのような店内。昔はおかずが並んでいたガラスのショーケースや味わいを深めたテーブルやイスが、何ともノスタルジックです。店構えやしつらえを創業から変えずにいるのは、お客さんからの強い要望から。「ドアの建て付けが悪くなって仕方なく新調したら、なんで変えてもたんやと怒られて。お客さんにはそれぞれ、うちの店との深い思い出がある。それを触ったらあかんのやと思いました」。店の歴史をお客さんから教わることも多いという幸子さん。これからも温かいもてなしを大切に愛され続ける一軒でありたいと語ってくれました。

 

食育大事典facebookページ
ページのTOPへ