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収穫間近の山椒畑へ

今年の生育状態を見つめる福井さん。例年通りの大きさに育っていないことから、少し小粒かもと心配そう。

5月も半ばに差し掛かったころ、間もなく朝倉さんしょが収穫シーズンを迎えると聞き、「朝倉さんしょ部会」の部会長を務める福井悦雄さんの畑を訪ねました。山裾にある畑には、立派に育った20本ほどの朝倉さんしょの木が植わっています。7年前に植えたという小さな苗木は福井さんの背丈を優に超え、澄んだ空気の中でのびのびと枝を広げていました。

「実が成長してくる今ごろになると、風が吹いただけで山椒独特の香りがふわっと鼻をくすぐるはずなんですが、今年はちょっと違うねぇ」と戸惑いの表情を見せる福井さん。例年なら5月末の収穫に向けすでに実を膨らませているはずが、今年は春先の雨が少なかったことなどが影響して成長が遅い様子。雨に当たるとぐっと実が大きくなることから、出荷までの天候に期待を寄せながらも、「今年は無事出荷時期に間に合うかどうか……」と心配を募らせていました。

雄木と雌木の特徴

2本の角のように見えるのが花柱。雌花が開花するとひょっこりと現れます。受粉して役割を終えると消えてなくなるから不思議。

山椒には雄木と雌木があり、雄木には花が咲き、雌木にだけ実がなります。庭などで育てる場合は対で植えないと結実しませんが、福井さんの畑には雌木しか植わっていません。「このあたりの山にはたくさん雄木が自生していて、春になると雄木の花粉を風や虫が運び、うちの畑の雌木に受粉してくれるんですよ」。自然の営みがあってこそ、福井さんの朝倉さんしょの木は毎年ふくよかな実をつけます。

雌木をよく見ると、小さく丸い粒の先からひょっこりと角が出ているのがわかります。これが花柱です。雌花が開花すると子房の上に角のような花柱が2本でき、受粉が終わると自然と花柱はなくなりぷっくりとした実になります。一方の雄木に咲く黄色い雄花は花ざんしょうと呼ばれるもの。食べることができ、完全に開花してしまう前のわずかな期間で収穫して希少な味として出回ります。スーパーではなかなかお目にかかれず、高値で高級料亭などに卸されることがほとんど。しゃぶしゃぶやつくだ煮にすると滋味深い味が口いっぱいに広がります。

実のベストシーズンはわずか

成長段階の朝倉さんしょの果実。雨にあたって最大5㎜の大きさにまで育ち、収穫の時を迎えます。

朝倉さんしょには他の山椒とは異なる点がいくつかあります。まずはひと房に100粒以上の実がなる豊産性の品種であること。成長すると鮮やかな緑色の実をつけ、一粒最大5mm程度まで膨らみます。実の芳香は強くフルーティー。辛味はまろやかで口当たりもやわらかです。また、枝にはトゲがありません。これは生産者にとってはありがたいこと。収穫時にトゲでけがをすることがなく、作業効率を高めます。

実の収穫期はわずか1週間ほど。若いころはとてもデリケートなので、傷つけないように親指の爪を使ってやさしく摘み取ります。実を割ってみると中から顔を出したのは乳白色の種子。朝倉さんしょを家庭で炊いても雑味がなくふっくらと仕上がるのには、この種子に秘密がありました。

「市場価値が最も高まるのが乳白色の種子のころ。つくだ煮にするにはやわらかくベストなときで、種子の状態を見極め、一番良い時期に一気に摘んで市場に送り込んでいます。シーズンを過ぎると種子が黒く変色し実も硬くなり、口当たりが悪く食べてもおいしくありません。料理用としての価値は下がるので、利益にならないんですよ」。

(つづく)

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