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オリジナルの「すもも」

すもも転がしは程よい力加減が難しい作業です。作業場にはゴロゴロとリズミカルな音が響きます。すもも転がしを終えると、表面に付いた傷から少しずつ水分が滲んできました。まるで実が汗をかいているよう。

森奈良漬店では四季ごとに実る野菜や果実を収穫し、年中漬け込みの作業が行われています。「今、ちょうどすももの奈良漬づくりが始まったところなんですよ。珍しいので見ていきませんか」。森さんの計らいで特別に製造工程を見学させてもらえることになりました。作業場は店から車で10分足らず。住宅街の中にあります。

すももの奈良漬は創業当時からあるオリジナルの味の一つ。初代が東大寺のお坊さんから漬け方のアドバイスを受けて商品になったものです。 「酒は飲めないお坊さんたちでも、いろんなものを食べたいという欲求があり、自分たちでも漬けていたんでしょう。その中でこれはうまいということで、初代に教えてくれたんやないかと思うんです」。

奈良漬に使うすももは熟す前の青い実が適しています。初々しい酸味が酒粕の風味と合わさって味わいはさわやか。シャキシャキとしたフレッシュな食感も心地良く、後を引くおいしさです。

鮮度を保つ塩漬け作業

重石をして数日で樽にはたっぷりの水が。すべてすももから出た水分だというから驚きです。すももの漬け上がり(画像下)。1年経つと果実らしい酸味は穏やかになり、酒粕のうま味がしっかりとなじんできます。

作業場に着くと、すももがたっぷり入った樽がさっそく目に飛び込んできました。この日の午前中に収穫したばかりの実は、梅よりもひと回りほど大きく肉厚。艶やかで見た目にもみずみずしさが伝わってきます。樽のそばでは職人の皆さんが手袋をはめて何やらゴロゴロ。

「これはすもも転がしという大事な工程の一つ。たらいに岩塩を敷き、その上に取ってきたすももを乗せて手で転がすんです。こうすることで表面に細かな傷が付き、塩漬けしたときに塩が入っていきやすくなります」。すももの皮は薄いため、力をかけ過ぎるとはがれてしまうことも。手のひらに神経を集中させながら慎重に作業を進めていきます。

すもも転がしが終わると樽に入れ、塩をたっぷりと加えて塩漬けの下漬けを行います。このとき使う塩は精製塩ではなく、赤穂の天然塩でなければいけません。天然塩に含まれるにがりなどの成分が素材に影響を与え、まろやかな味わいと歯切れの良さを生んでくれます。塩漬けの下漬けに使うのはこの塩のみ。1滴の水も加えなくても徐々にすももが水分を吐き出し、3~4日ほどで樽の中には実がタプタプと泳ぐほど水が溜まります。この状態になると塩漬けの本漬けへと移ります。改めて新しい塩をし直し、重石を乗せて寝かせること約2~3ヵ月。樽の中で静かに酒粕に漬け込む時を待ちます。

(つづく)

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