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食の安全を守る戦い

昆布やちりめんじゃこ、山椒などの原材料や出来上がった製品は安全装置と厳しい人の目で異物混入を防いでいます。

昆布をはじめ、ちりめんじゃこや山椒などの素材を選ぶ際、神宗では味に力強さを持つ天産物であることにこだわってきました。その一方で徹底して取り組んできたことが安全・安心に配慮した品質管理です。ちりめんじゃこには網の一部や釣り針が入っていたり、山から収穫してきた山椒には小さな枝や土がついていたりもします。天産物を扱う上で異物が混じってしまうことは仕方のないこと。けれどもお客さんが口にする限り、それらが少しでも入っていることは絶対に許されません。

異物混入対策には万全の設備と人材を投資。製造の前段階で金属探知機やX線を使って原材料を厳しくチェックし、最終的には目視で確認して食の安全を守っています。また、原材料の原産地はすべて公開し、放射性物質の自主検査も実施して結果を公表。情報をオープンにすることで、毎日の食卓に安心を届けられるよう努力しています。

関西出汁の発展は水にあり

ノルウェーにあるオルデダーレン渓谷で生まれたオルデン水。美しい環境が育んだ水は曇りのない味です。

また神宗では出汁に使う水にも強いこだわりを持っています。水にはカルシウムイオンとマグネシウムイオンなどのミネラルが含有されていて、WHO(世界保健機構)では硬度が120mg/l以下を軟水、120mg/l以上を硬水と定めています。ミネラル分の少ない軟水は、口当たりがやわらかくうま味成分を引き出しやすいという特徴があり、出汁で煮炊きをする和食向き。ミネラル分の高い硬水は喉につかえるような硬さがある分しっかりした飲みごたえがあり、豚や鶏で取るスープに使うと灰汁(あく)が出てクリアな味になります。日本の水道水は軟水にあたりますが、関西と関東では硬度に差があります。東京が約65mg/lであるのに対し、大阪は約44 mg/lとやや低め。昆布は硬度が低い水ほうが上質な出汁が取れるため、関西で昆布出汁が普及した要因の一つではないかとも言われています。

神宗ではこうした水の特性に注目。大阪の水は軟水ではありますが季節によって水質に優劣が出るため、佃煮を炊くのに安定して同じ味を出すことができないという難点がありました。そこで目を付けたのがノルウェー産の「オルデン水」。約5000年の歳月をかけて地下でろ過された氷河水は非常に純度が高く、硬度は14 mg/lと究極の軟水です。

「水道水とオルデン水それぞれに昆布を浸けて出汁を抽出してみると、明らかに味が違い、オルデン水のほうが甘味を強く感じられます」と小山さんもその実力を絶賛します。神宗にとって水もまた、味を追求するうえで欠かせない素材の一つになっているのです。

再び味の原点に戻って

「細切り昆布」はそのまま食べるだけでなく、料理にうま味をプラスする調味料としての役割も担ってくれます。

東日本大震災をきっかけに神宗は新たに「素にして上質」という企業理念を掲げました。「素」は大自然の恵みを受けた日本伝統素材、「上質」は永遠に飽きることがない食の原点を意味します。つまりこの言葉には、古来より朽ち果てない食材を使って商品づくりを今一度見直し、日本で伝承されてきた本来の食の在り方を追求しようとする心意気が込められています。

「東日本大震災が発生したころは、ちょうど出汁パックを開発しようと研究に勤しんでいました。その中で加工食品の多くは化学調味料や酵母エキス、人工甘味料などで味が成り立っていることを知りました。当社では震災前までうま味調味料を使用してはいましたが、そのほかの不自然なものは一切使っていなかったので、世の中の加工食品に秘められた味の実態を知らなかったんです」と小山さんは振り返ります。確かに人工のものに頼れば簡単に味がまとまり、コストも抑えることができます。

「でも日本には天然のうま味があるじゃないですか。それを使わずして見せかけの味ではダメだと。もっと正直な商売をしなければいけないなと思いました」。

以来、うま味調味料は排除し、昆布や煮干しなどで取った出汁で昆布を炊き、日本酒を加えてふっくらと仕上げる昔ながらの家庭的な製法に立ち返りました。手間もコストもかかるやり方を貫くことはリスクとも背中合わせ。しかし、思いを込めて作ったまっすぐな味が売れることは、しょうゆや日本酒、かつお節を製造する日本の食の伝統産業にも良い連鎖を生むのではないかと小山さんは考えています。

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