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端正な味の裏にある職人の苦労

豆腐作りは毎日早朝から始まります。その日の気候を読みながら大豆の浸水状態を確認し、慎重に作業を進めます。

大手メーカーでは最新機器が整備され、無人に近い状態で製造が行われていますが、服部ではほぼ手作業。職人の繊細な技により味に磨きをかけてきました。紅葉のトップシーズンともなれば1日の製造量は南禅寺と清水寺界隈の料理店に卸す分だけで型箱3000~4000枚。かつては5000枚に上るときもあったそうです。衛生管理に気を配り密閉した工場内は、機械の熱や立ち上る蒸気などで室温がぐんぐん上昇し、夏場はまるで蒸し風呂状態。4~6時間も仕事をすれば作業着が大量の汗でずっしりと重くなり、体への負担もかなり大きい重労働です。

豆腐作りはまず大豆を水に浸けてやわらかくするところから始まります。服部では粒の大きな国産大豆を使用しているため、大豆の種類や外気温によって浸水時間を微調整。一般的な作り方より時間を長くしたり、冬場はぬるま湯に浸けて前日から準備をします。大豆が水を含んでやわらかくなると細かく砕いて加熱。絞っておからと豆乳に分けます。できあがった豆乳ににがりを入れて固めると豆腐になります。

北海道産大豆へのこだわり

米と同じく大豆にも新物があり、出回る時期には使用。浸水時間や炊く時間などに気を配らなければいけない分、甘味と香りが格段に良くなります。

豆腐を作るために必要な材料は、大豆、凝固剤(にがり)、水の3つのみ。この上なくシンプルであるがゆえに、どこまでこだわるかが仕上がりの味に大きく関わってきます。服部の豆腐に使われる材料は、服部さんの厳しい目によってとことん吟味されたもの。特に重要な大豆は、糖度が高く質も安定している北海道産のものが最適と信頼を置いています。

国産大豆は天候の影響を受けやすいため、輸入大豆と比べるとはるかに希少で高価。また、大豆に含まれる糖度は豆腐に甘味をもたらす反面、にがりを入れても固まりにくくロス率が高くなってしまうことから、100%北海道産の大豆で製造しているところは多くありません。けれども味と質を追い求める服部では、デメリットも受け入れ北海道産を採用。凝固作業に高い技術を要する高濃度の豆乳を抽出し、職人の経験と勘で他ではまねできない味わい深い豆腐を作り上げています。

すまし粉からの脱却

大豆本来の風味やつるりとした喉越しの良さを存分に堪能できる服部の豆腐。職人たちの匠の技が味を支えています。

また服部では豆腐の味に強く影響するにがりにもこだわり、自然塩から採取したミネラル分の豊富な国産を使用しています。にがりは添加する量が極めて重要で、熟練の技が生きるところ。「多すぎると豆腐に気泡ができ雑味が出てしまうし、食感も悪くて食べられません。だからといってにがりを極端に減らすと、今度はやわらかすぎて箸でつかめないとクレームが出てしまうんですよ」。

粗製海水にがりを使うようになったのは、一夫さんの代になってからです。先代まではすまし粉と呼ばれるもので豆腐を固めていました。第二次世界大戦中に塩の統制があり、にがりが手に入らなくなってしまったことから、代用品として重宝されたのが硫酸カルシウム。これがいわゆるすまし粉で、どの豆腐店でも使われるようになりました。すまし粉を使うと豆乳の濃度が薄くても固まり、歩留まりが良いため作り手にとっては好都合。口当たりもやわらかくなめらかになり、お客さんにも好評でした。けれども服部さんはずっとすまし粉を使った豆腐の味に疑問を抱いていました。

「みなさんおいしいおいしいと言われるけど、そないにおいしいものかなぁと。私には南禅寺の有名湯豆腐料理店に豆腐を卸しているという誇りがあったので、すまし粉の豆腐の味に負けないものを作ろうと考えるようになりました」。

(つづく)

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