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南禅寺豆腐の復活

職人の技を集結させた自慢の味。湯豆腐にすると、濃厚な大豆の甘味と香りが一層引き立ちます。

よりおいしい豆腐を追い求める服部さんが立ち返ったのは、戦前に南禅寺の門前で人気を博していた味。国産大豆と粗製海水にがりを使った昔ながらの豆腐をよみがえらせることを思いつきます。けれども当時は思いを形にできるだけの技術がなく、理想とする風味や食感にははるかに及びません。諦めずに試作を続けていたある日、ふと目にとまったのが専門誌。にがり100%の豆腐を作る機械を製造していたメーカーの記事を見つけ、九州まで訪ねることにしました。

「そこで作り方を拝見すると、釜で豆乳がちゃんと炊けていないとにがりを入れても固まらないこと、大豆の状態や外気温によってにがりの割合も変えなければいけないことなどがわかりました。思い描く豆腐にたどり着くにはそれなりに設備投資も必要だと痛感。数年前に新調したばかりのプラントを格安で手放して釜を購入し、粗製海水にがりでの豆腐づくりに本腰を入れることにしたんです」。

思い切った方向転換で大胆な味の革命に取り組むと、大手スーパーやデパートなどからも注目されるようになり販路を拡大。南禅寺から唯一、商品に南禅寺御用達の看板を掲げることも許され、服部さんは豆腐職人として大きな喜びを手にすることができました。

充填豆腐が増えている理由

絹、木綿、湯豆腐用、冷奴用のほかにおぼろ豆腐も人気。にがりの量を極力抑えた食感はまるでプリンのよう。

このところは豆腐の種類が増え、メーカーごとに個性を競い合った新商品も次々に登場しています。甘味を強調したものやねっとりとした舌触りのものなど、味や食感のバリエーションも豊かになりました。一方で、野趣に富んだ大豆の香りがする豆腐が少なくなっているようにも感じます。それは「簡単に製造できる充填豆腐が増えたから」と服部さんは言います。充填豆腐とはできあがった豆乳を一度急速に冷まし凝固剤を加えたのち、すぐに容器に入れ再び加熱して作ったもの。大量生産を可能にし、大手をはじめ多くのメーカーが取り入れている製法です。

「本来豆腐は大豆を炊いて絞って、熱く香りが出ているうちに固めることで風味高い豆腐に仕上がります。けれどもこの方法では大量生産ができずロスが出るうえに、作業も非常に難しくなります。その点、充填豆腐は量産向き。失敗が少なくロスも出ないし日持ちもするので、広く市場に流通させるうえでは何かと都合がええというわけです。でも、二度炊きすることで大豆独特の香りは飛んでしまう。だからどうしても甘味はあっても香りがしない豆腐ができてしまうんです」。

市場で見かける豆腐は充填豆腐が主流になってきている今日。表示が義務付けられていないこともあって充填豆腐かそうでないかはプロでも見た目には判断しづらい商品もあるそうです。

(つづく)

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