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お茶屋の娘に生まれた使命

茶道裏千家専任講師のお免状も持つ田村さん。鮮やかな手さばきで点てる抹茶はきめ細やか(画像上)。
冷たい抹茶は同じ点て方でも泡立たないのが特徴。飲んだときの印象も温かい抹茶とは異なり、甘みが際立ちます(画像下)。

田村さんの実家は創業70年を迎えた尼崎の老舗茶屋「甘露園」。次女として生まれ、幼いころから両親が懸命に働く背中を見つめてきました。「小さいながらに店の大事さを理解していたのか、小学生のときから将来はお茶屋になると心に決めていました。家業への思いは大人になっても揺らぐことはなかったです」。

物心がついたときから、家での飲み物といえば真夏でも急須から注がれる日本茶。「友達の家で麦茶という冷たい夏の飲み物があることを知ったときは衝撃的でした(笑)。私の中に備わっているお茶に対する感の鋭さは環境が作ったもの。今の自分があるのは100パーセントお茶屋に生まれたからだと思っています」。

家業を手伝うようになり、本格的にお茶の世界に足を踏み入れてからは、持ち前のバイタリティーを発揮。男性社会の業界を臆することなくピンヒールで闊歩し、日本茶のソムリエと言われる日本茶インストラクターや日本茶鑑定士の資格も取得して実力をつけると、一目置かれる存在に。現在は自身の店を切り盛りしながら、女性初の全国茶業連合青年団の団長として多忙な毎日を送っています。

お茶はお金を払って飲むもの?

田村さんが日本茶鑑定士になった10年ほど前は業界全体が冬の時代を迎えていました。農家や問屋、小売店が抱えていたのは深刻な後継者問題。田村さんが家業を継ぐと周囲に告げたときは「業界の将来が厳しいとわかっているのに本気?」と驚かれたと言います。
「私と同世代の人はみんな華やかな仕事に憧れて、お茶屋のような地味な仕事は淘汰されていくころでした。スーパーでは100g300円の茶葉が売られていて、100g1000円の茶葉との味の差はなかなか理解してもらえません。飲食店に日本茶のメニューを置いてくださいと営業に行っても、お茶はお客さんからお金をいただくものではないと門前払い。これはごもっともで、お寿司屋さんでもお茶はサービスで出てくるもの。よほど特別なお茶でなければ売れないという現実を目の当たりにしました。それなら私がお茶でお金を生める業態の店を作ろうと思い立ち、形にしたのが今の『桜里』です」。

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