六甲山Q・B・Bチーズ館

神戸市内からバスとケーブルカーを乗り継いで1時間足らず。神戸市立六甲山牧場は都会の喧騒を忘れさせてくれる安らぎのスポット。のんびりと暮らす家畜たちのそばでは、手作業でチーズ作りが行われています。

雨が降っていない日は、牧場内を自由に歩き回っている羊たち。のどかな風景が訪れるものを癒してくれます。

六甲山の手作りチーズ

動物と人が豊かな自然の中で触れ合うことができる神戸市立六甲山牧場。天気の良い日は羊たちが自由に行き交い、牛や馬などの家畜が放牧されている光景はまるでヨーロッパの田舎町を訪れたかのよう。マンサード型の牛舎や赤レンガづくりのサイロも異国情緒を高めています。その広大な施設の一角にあるのが、六甲山Q・B・Bチーズ館。こちらではチーズの歴史などについて展示し、カマンベールタイプのナチュラルチーズ「神戸チーズ」を手作りしています。タイミングが合えば製造工程を窓越しに見学することも可能。一つ一つ丁寧に作られるチーズは、愛情がたっぷりと込められ、クリーミーで芳醇な味わいです。手間と時間がかかり大量生産ができない分、貴重な味としてひそかな人気を集めています。

チーズの製造室の室温は常に25~30℃をキープ。乳酸菌が活発に活動する環境を整えています。カードが固まったら1cm角に切っていきます。切り口から出たホエーにも栄養がたっぷり。捨てずにレストランで利用されます。

約1ヵ月かけて育まれる味

「神戸チーズ」の原材料となるのは、敷地内にある乳牛舎から運ばれるフレッシュな生乳です。それをまずは加熱殺菌し、乳酸菌を加えて撹拌・発酵。規定の酸度に上るまで2時間ほど待ちます。発酵が終われば白カビの胞子とレンネット(自然由来の凝乳酵素)を入れて凝固。凝固させたものはカードと呼ばれ、カードの固まり具合を確認し、一定の状態になったらピアノ線を張った道具を使ってサイコロ状にカットしていきます。しばらくすると切り口からじわじわと水分(ホエー)が出てくるのでそれを排出し、適度に水分を残したカードがチーズのもととなります。その後、カードを穴の開いた円筒形の型(フープ)に移し、数回反転させて一晩寝かせ、さらに水分を抜くと生チーズの完成。所定の大きさにカットし、食塩水に漬け込んで予備熟成に入ります。10日ほどすると表面に白カビが発生。紙に包んで白カビの成長をコントロールしながら、2週間程度本熟成させて出荷となります。

フープに流し込んでゆっくりと水分を抜いていきます。こうして出来上がる神戸チーズは、牛乳1Lから100g程度だとか。

熟成こそおいしさのカギ

カマンベールタイプのチーズには生タイプとレトルトタイプがあり、スーパーなどでよく見かける大手メーカーの商品は大半がレトルトタイプです。出荷前にある程度まで熟成させてからプラスチックの容器に入れてフィルム包装し、カビや乳酸菌の働きを止めるため、出荷後は熟成しません。一方の生タイプは白カビと乳酸菌が活きているので、出荷後もじわじわと熟成が進みます。「神戸チーズ」は生タイプに属し、買ったばかりのときと賞味期限が迫ってきたときとは味に変化が生まれるのも特徴。「熟成が進むにつれてカビが脂肪とタンパク質を分解し、芯がなくなってトロトロの食感になります。冷蔵庫で寝かせて自分好みの食べごろを見極めるのも楽しみ方の一つですよ」とは、チーズ作りにも携わってきた六甲山牧場広報担当の木村健吾さん。ふくよかな味に育ったチーズには、しっかりした飲み口のワインがベストマリアージュです。

六甲山Q・B・Bチーズ館のおすすめ

神戸チーズ

濃厚でクリーミーな神戸チーズ。上品な風味でクセが少ないため、誰にでも食べやすいのが人気の秘密です。

デルパパサンドB

パリッと香ばしいバゲットにクリーミーな神戸チーズをサンド。口の中でトロリととろけ、野菜や生ハムとの相性も抜群です。

六甲山チーズシェイク

牧場自家製のチーズをミックスして作ったオリジナルのシェイク。まろやかでやさしい甘さが広がります。

展示ホール

館内ではチーズの種類や歴史、豆知識などをパネル展示。ナチュラルチーズは世界に3,000種類以上あるそう。

DATA:

六甲山牧場(六甲山Q・B・Bチーズ館)

兵庫県神戸市灘区六甲山町中一里山1-1

TEL 078-891-0280(六甲山牧場 管理事務所)

営業時間 9:00~17:00(入場は16:30まで)
4~10月の土・日・祝と8月は~17:30(入場は17:00まで)

定休日 11~3月は火曜休み(4月~10月は無休)

入場料 大人500円、小・中学生200円。
詳細は六甲山牧場のサイトにてご確認ください。

URL http://www.rokkosan.net

(2015年12月 現在)

六甲山Q・B・Bチーズ館 からのメッセージ

普段なかなか見ることのできないチーズ作りの一端を垣間見ることができます。製造作業に華やかさはないものの、いろいろと発見があるのではないでしょうか。見学は作業がある日しか行っていませんので、ご希望の方は事前にご連絡いただき、確認の上ご来園ください。

【取材レポート】
一般のお客さんたちと一緒に見学させてもらったチーズ作り。「へー、こんなに手間がかかるんですね」「すべて手作業だと大変ですね」と初めて目にする製造の様子に、みなさん新鮮な驚きを言葉にしていました。カルシウム、タンパク質、脂肪、ビタミンとたくさんの栄養成分がぎゅっとつまったチーズ。特に生タイプのチーズは栄養価も高いそう。今回改めてチーズについて学び、1日1食は取り入れたいと思いました。