森のおはぎ

おばあちゃんがせっせと手で丸めて作るものとは一線を画すモダンなルックスに、合わせる素材や食感はまさに新感覚。けれどもどこかに懐かしさを漂わせるお澄まし顔のおはぎたち。穏やかな甘さは日本酒ともベストマッチです。

季節の商品を作るときは市場で素材を探したり、昔から親しまれているおやつをベースに考えることも多いとか。ショーケースに並ぶかわいいおはぎたちは日本酒と一緒に楽しむお客さんもいるそう。

キュンと心ときめく和のおやつ

箱を開けて目に飛び込んでくる豊かな色合いと愛らしい姿にノックアウト。崩すのがもったいないと思いながらもそっと口に運べば、素朴で繊細な甘さが心までふわりと包み込んでくれます。そんな温もりに満ちた「森のおはぎ」のおはぎたち。選び抜いた素材を使い、一つ一つ丹精込めて手作りされた味は、昔ながらの定番から四季を表現した個性的なものまでがガラスのショーケースに並んでいます。弾力のあるお餅にはほんのりと塩気を効かせ、食感のアクセントにぷちぷちと弾ける雑穀をプラス。あんは合わせる素材との相性を考え、商品によって炊き分けています。あっさりとした甘さは飽きがこず、少々クセのある素材とのバランスも絶妙。女性なら2口ほどでいける小ぶりなサイズに、2個3個と手が伸びます。

雑穀は絶対に使いたいと雑穀のエキスパートの資格を取得したという森さん。かっぽう着が定番の仕事スタイル。

疲れを癒やしてくれた味に魅せられ

店主の森百合子さんは元テキスタイルデザイナー。街のすがすがしい空気感と人の温かさに惚れ、小さな商店街にわずか3坪ほどの店を構えたのは8年前のことです。「会社員時代、デパートでいろんな味のおはぎを買い求めては、懐かしい甘さにほっこりとした幸せをもらっていました。仕事に疲れた体を癒やしてくれる私にとっては栄養剤のようなものだったんです。店を持ち、飽きずにずっと食べてもらえるお菓子を作りたいと考えていたとき、頭に浮かんだのがおはぎでした」。大学時代に喫茶店の厨房でお菓子を作るアルバイトをしていた経験も菓子職人になるきっかけになったそう。「当時は、見た目にかわいらしくおいしいものを自分なりに工夫するのが楽しくて。友達にも作ったお菓子を『森さんの作品みたい』と評価してもらえたことが自信になりました」。

秋冬の限定「焼き栗黒米もち」は栗のあんの中に、国産栗と砂糖で作ったくりきんとんを忍ばせています。おはぎと並んで人気の「やわらかわらびもち」は、その名の通りもっちりとやわらかで伸びがよい独特の食感。

季節の味はあっと驚く素材を合わせて

お客さんに食べてもらうなら、あんこやきなこだけならありきたり。食べたことも見たこともないおはぎを作ろうと、森さんが何度も試作を重ね生まれた味が、今や人気商品の一つになっている「くるみ黒米もち」や「本醸造みたらし雑穀もち」です。季節ごとにお目見えする旬の味も唯一無二。晩春は木の芽、夏はとうもろこし、秋にはぎんなん。意外性のある素材も持ち味を生かし、あんやお餅とバランスよくまとめてしまうところに森さんのセンスが冴えます。「この仕事をしていてうれしいのは、おはぎやあんこが苦手だった人から『食べられるようになった』『好きになった』と言ってもらえたとき。食べてみたいと思ってもらえただけでも作り手冥利に尽きます」と森さん。小さくても存在感はたっぷり。記憶に残るお菓子をぜひご賞味あれ。

森のおはぎのご紹介

大納言雑穀もち

大粒でなめらかな食感の北海道産大納言を使ったあんは食べ応え十分。小粒の小豆をブレンドして風味を高めた看板の味。

深煎きなこ雑穀もち

たっぷりまとわせた深煎りのきなこが香ばしい香り。中のあんは北海道産小豆を使用しやや甘めに炊き上げています。

本醸造みたらし雑穀もち

みたらし団子からヒントを得て作ったという一品。丹精込めて仕込まれたしょうゆを使ったたれはコクがありさっぱりとした甘さ。

ほうじ茶黒米もち

京都老舗店のほうじ茶を粉砕して練り込んだあんは、上品な香りとほろ苦さが特徴。古代米の黒米を混ぜたお餅とも好相性。

DATA:

森のおはぎ

大阪府豊中市中桜塚2-25-10

TEL 06-6845-1250

営業時間 10:00~13:00 14:00~売り切れまで

日・月曜休み(祝祭不定休)

http://morinoohagi.jimdo.com/

森のおはぎ からのメッセージ

当店のおはぎはどれを食べようかと迷う楽しみのあるお菓子です。家族や友達と囲んでワイワイ食べてもらえるとうれしいです。1月からは順次「蜜黒豆雑穀もち」や「花桜よもぎもち」など春の訪れを感じさせる季節の味が登場します。夕方には売り切れてしまうものもあるので、事前予約が確実です。

【取材レポート】

取材におじゃました日はオープンからお客さんがひっきりなし。ある人は友人に噂を聞き、尼崎から初めて訪れたそう。「百貨店の催事で出店されていた時は売り切れで買えなかったので今日はリベンジ。無事お目当てのものをゲットできてうれしいです」と満面の笑みで話してくれました。バギーを引いたママも多く、同店のおはぎ以外は食べない子もいるそう。小さな子どもの間でもファンが広がっているようです。