松鶴寿司

「一度食べたらやめられない」と、関西の食通たちの間で密かに人気が高まっているぽん酢「冷奴乃友」。考案したのは神戸の寿司職人です。国産食材を惜しげもなく使用し、こだわり抜いた1本は、贅沢な味わいです。

店主の藤原守さん(右)と息子で2代目の弘法さん(左)。地元で長く愛される味を守っています(画像上)。カウンターが数席でアットホームな雰囲気。馴染みの顔が揃うことが多く、賑やかな声がこだまします(画像下)。

地元で評判の天然ネタの寿司

神戸市須磨区板宿。下町情緒が残るこの街に、親子で暖簾を守る「松鶴寿司」があります。板宿商店街に店を構えて33年。鋭い目利きで仕入れた魚介は、瀬戸内海で獲れる天然物が中心です。「天然物は格段に味が違います。やっぱりおいしいですよ」と話すのは、この道50年近くになるという店主の藤原守さん。息子で2代目の弘法さんと共に店に立ち、カウンター越しにお客さんたちと会話を弾ませながら旬の味を握ります。

店の名物は蒸し穴子と玉子。丁寧に蒸し上げた穴子の身は白く艶やかで、ふっくらとやわらか。玉子は砂糖と塩でシンプルに味付け。わざと焦げ目がつくように焼き、うま味を閉じ込め、職人技が活きたふわっとジューシーな一品です。守さんは店を持ったころから、品書きに並ぶものは何でも一から手作りするのが信条。しょうゆ、寿司酢、ポン酢、土佐酢なども素材との相性を考えてオリジナルの味を追求し、お客さんたちに喜ばれてきました。

醤油は9種類以上をブレンド。寿司に付けすぎてもしょっぱくないように計算されています(画像上)。弘法さんは寿司職人としてだけでなく、催事に出店したり新商品の開発にも力を注いでいます(画像下)。

店の味を家庭でも楽しめる

このところ、寿司と並んで評判となっているのが、1本1本手作りしているぽん酢です。弘法さんが店で出していた味に改良を重ね、商品化しました。
「今は回転寿司店が街中にたくさんあり、個人が営む寿司屋がどんどん衰退している時代。板宿商店街も昔より活気がなくなってきました。このままではダメだと思い、店の新たなチャレンジと、地元の活性化や障がい者雇用の促進にも役に立つことができればと、店の味を商品として売り出すことを決めました」と弘法さん。商店街内に作業場を設け、ぽん酢作りは職人が、瓶詰めなどを障がい者たちが行っています。

最初に販売を始めたのが「お魚乃友」。魚に合うようにと守さんがレシピを考え、創業時から白身魚のちりにぎりなどに使っていたぽん酢です。徳島県産のすだちを絞り、鹿児島県枕崎産のかつお節、特別なたまりじょうゆをブレンド。体に優しいものだけを使ったまろやかな酸味とかつおのうま味が特徴です。

「お魚乃友」ではまろやかすぎて物足りないという人は、ゆずとすだちのパンチを利かせた「冷奴乃友」がおすすめ(画像上)。松鶴寿司の味をすべて試したい人には、販売している全商品を詰め合わせたセットもあります。贈り物にも最適(画像下)。

新商品も続々と登場し好評

「お魚乃友」をベースに、次は冷奴や肉にも合うものをと弘法さんが試行錯誤。3年余りの歳月をかけてようやく誕生した「冷奴乃友」は、ゆずとすだちで酸味を強め、パンチのある味わいに仕上げました。
「使う果汁から吟味し、柑橘特有の香りを損なわない絶妙な配合を探りました。酸味に負けずかつお節のうま味もたっぷりと感じられます。詳しいことは企業秘密ですが、作ってから数日間熟成させることで、より深みのある味を引き出しているんですよ」。

ぽん酢を抜いて人気が急上昇しているのが土佐酢。飲み干せてしまうほどのまろやかさから催事でも飛ぶように売れ、購入した人からはどんな料理にも合い万能だと大好評。
「ぽん酢や土佐酢を購入したお客さんが気に入ってくれ、店にも足を運んでくれるようになりました」と笑顔の弘法さん。積極的に新商品の開発にも取り組んでいるそうです。ぽん酢は鍋との相性も抜群。寒さ深まるこの時期に、ぜひ一度味わってみては。

松鶴寿司のおすすめ

蒸し穴子

ふわっと口の中でとろける蒸し穴子のにぎり。煮詰めはまろやかな甘みとコクが感じられます。

玉子

しっとりと焼き上げた玉子焼き。店を訪れたら必ず食べたい、店主の心意気を感じる味です。

冷奴乃友

神戸の名品として「神戸セレクション」にも認定された「冷奴乃友」。締まるような酸味が一度食べるとやめられないと人気です。

土佐酢

サラダやもずくにさっとかけるだけで味が決まる便利な1本。酸味が穏やかで丸みのある味わいです。

DATA:

松鶴寿司

兵庫県神戸市須磨区前池町2−2−7

TEL 078−733−1045

営業時間 11:00〜14:30 16:30〜22:00

定休日 水曜日・第3火曜日

https://shocacu.com

松鶴寿司 からのメッセージ

駅からも近く、アクセスの良い場所にあります。家族で営むアットホームな店なので、一見さんでも気軽に入っていただければうれしいです。ぽん酢は当店ホームページの他に、関西では高級スーパーなどでも販売しています。また、事前予約で幕の内も準備できます。

【取材レポート】

メディアなどに取り上げられる機会も増え、人気に火がついた松鶴寿司のぽん酢。蒸し穴子のにぎりに使う甘だれも、期待に応えてついに商品化。催事では甘だれをたっぷりと絡ませた蒸し穴子めしを販売すると、1週間で800食も売れる盛況ぶりだそうです。現在はお客さんからの要望で煮魚用の出汁やそうめんつゆの開発も行っているそう。まだまだ勢いは収まりそうにありません。