ならBonbon

ガラスの小瓶に入った小さなあめ玉。赤や緑、茶に白と色とりどりに並んでいます。ここは奈良にあるあめ専門店「ならBonbon」。県内産の食材を一粒に込め、奈良の魅力を伝えています。

手のひらにすっぽりと収まるほどの小さな瓶に入ったあめたち。ずらりと並んでいる様子にときめきます。

雑味のないすっきりとした甘さ

奈良の香料や人工甘味料、合成着色料は使わず、素材が持つ天然の色と味、香りを表現する「ならBonbon」のあめ。県内で古くから栽培されている大和野菜や地元酒蔵の甘酒などを、グラニュー糖と水あめを加えてアレンジ。奈良県の新しい土産としても注目されている一品です。

フレーバーは定番から限定まで15〜17種類。小さな一粒を頬張ると、やさしい甘みと香りがじんわりと広がり、すーっと溶けてなくなると同時に風味も消えていきます。舌の上に甘ったるさが残らないのが自慢だと話すのは、店主の神谷優希さん。「奈良にしかない食材を使い、自分にしか表現できないお菓子を通して、もっと奈良の良さを知ってほしい」と言葉に力を込めます。

カラフルなラベルやパッケージは正倉院の文様をモチーフにしています(画像上)。手まりの形は奈良時代に伝わったとされている蹴鞠からインスピレーションを受けて(画像下)。

素材の持ち味を生かした製法

地元でフランス菓子の教室を開いていた神谷さんが、あめを作ることになったのは、大和野菜のカブの一種「片平あかね」に出合ったことがきっかけ。鮮やかな赤い色に魅了され、「あめは世界共通の食べ物。日持ちもするのでお土産に重宝してもらえるのでは」と大根あめからヒントを得て、約2年かけて商品化しました。その道のりは紆余曲折。クリアしなければならない大きな壁の一つが、片平あかねの赤色をどう表現するかということでした。熱を加えると色が失われてしまうため、そのままでは使うことはできません。そこで、フリーズドライにしてからパウダーにしてあめに練り込むことを発案。素材本来の色と香りを閉じ込めることに成功しました。あめにするには個性的すぎる味わいも試作を重ねて調整。ほんのりとカブの風味を残し、穏やかな甘酸っぱさで飽きのこない味が完成しました。

あめは職人による手作り。ふぞろいな形から、温かみが伝わってきます。

特産品をまだまだあめにしたい

「こだわった材料を使い手間をかけて加工をしないと最高のものはできない」と神谷さん。フランス菓子の技法を応用し、新しい味を生み出すことにも力を注いでいます。宇陀市特産の青豆はしっかりと炒り、香ばしいきな粉にしてあめに加工。山間の高原で農薬を使わず丁寧に育てられる唐辛子にも挑戦し、心地よい刺激とうま味を引き出しました。薬草の産地で知られる高取町で育つセリ科のヤマトトウキは、セロリに似た香りを生かし爽やかな一粒に。どれもユニークな味で好奇心をくすぐります。

「生で食べるとイマイチだと感じる食材でも大丈夫。個性が強いほうがあめにするのには向いています。産地でおもしろい食材を見つけると、ついあめにしたくなるんですよ」。創作意欲を掻き立てる食材は、まだまだ奈良に眠っているそう。目下取り組んでいるのは、フルーツのフレッシュさを伝えるあめの開発。不自然なものには頼らず、弾けるみずみずしさを表現できたらと目を輝かせます。

ならBonbonのおすすめ

片平あかね

奈良の伝統野菜を使った看板の味。ほのかな甘酸っぱさが後を引きます。

麹あまざけ

甘酒のナチュラルな甘みがやさしく、懐かしい味。ほっと心を落ち着かせてくれます。

古代ひしお

しょうゆや味噌のルーツとなったひしお。甘じょっぱく、くせになる味です。

ほうじ茶ラテ

茶師がじっくり焙煎した香ばしいほうじ茶を使って。ミルクとの相性も抜群です。

DATA:

ならBonbon

奈良県奈良市橋本町3-1きらっ都・奈良1F109

TEL 0742-43-5446

営業時間 10:00〜19:00

定休日 木曜

http://narabonbon.com

ならBonbon からのメッセージ

素材の味をしっかり感じられるものを作っています。あめを通して食の大切さや奈良の文化のすばらしさを伝えたいというのが私の思い。楽しく召し上がっていただけるものになっていますので、ぜひご賞味ください。

【取材レポート】

あめの商品開発に携わる以前は、地元の女子大生たちと一緒に、奈良漬を焼き菓子にすることにチャレンジした神谷さん。「奈良漬はすでに完成した食品なので、アレンジするのは難しいと言ったのですが、女子大生の熱意に負けて協力することに。さまざまな検査をして奈良漬を分析し、2年かけてデータを取りました」。こうして生まれたのが奈良漬サブレ。大ヒットし、奈良観光みやげもの大賞を受賞しました。こちらも気になる味。次回はぜひ食べてみたいと思いました。