さかい利晶の杜

仁徳天皇陵古墳や由緒ある神社仏閣がまちの歴史を伝える堺。路面電車が走りレトロな風情を残す中心部に、ガラス張りのモダンな外観がひときわ目を引く「さかい利晶の杜」はあります。こちらは2015年にオープンした新スポット。茶の湯に気軽に触れることができるとあって、外国人観光客からも人気を集めています。

千利休茶の湯館は「千利休と堺のまち」「千利休と茶の湯」「千利休とその後」の3コーナーから成り立っています。

茶の湯文化発祥の地・堺

わび茶と呼ばれる茶の湯の一様式を大成したことで知られる千利休。大永2年(1522年)に貿易で栄える大阪府堺市で商人の子として生まれました。当時の堺のまちは国際都市として繁栄し、商人が自治を取り仕切り文化を発信。茶の湯も町衆文化として親しまれていました。利休は若いころより茶を学び、北向道陳、武野紹鷗に師事したといわれています。その後頭角を現し、今井宗久、津田宗及と並び「天下三宗匠」と称され多くの弟子を抱えるまでになります。織田信長や豊臣秀吉からも一目置かれ、天下一の茶人として権勢を振るいました。
「さかい利晶の杜」はそんな利休の足跡をたどり、茶の湯の世界を気軽に体験できるミュージアムです。館内1階は、利休の人物像に迫り、茶の湯を歴史文化の視点から解き明かす「千利休茶の湯館」と、お点前体験もできる「茶の湯体験施設」で構成されています。

千利休屋敷跡に面した茶の湯体験施設。本格的な茶室では床の鑑賞やお茶・お菓子のいただき方など作法を教わったり、自分でお茶を点てることもできます。

初心者も満喫できるお茶の世界

「千利休茶の湯館」では、堺のまちと利休とのつながりや天下人たちとの関係、茶の湯(わび茶)についてパネルや展示品、ビデオ上映などでわかりやすく紹介しています。コーナーの一角には壮年期と晩年期の利休の茶室(一部)を再現。比較してみると、わびの精神を突き詰め禅に強い影響を受けた、利休の茶の湯の変遷を垣間見ることができます。
千利休屋敷跡に面した「茶の湯体験施設」には3つの立派な茶室がしつらえてあり、予約すれば本格的なお点前体験が可能です。表千家、裏千家、武者小路千家の先生による指導のもと、普段着のまま基本的な作法や茶筌ふりを学べるので、初心者でも気負うことなく楽しめます。見学の途中でほっとひと息つくなら立礼茶席へ。香り高い抹茶と美しい季節の和菓子を椅子席でカジュアルにいただくことができます。目の前で披露される茶道三千家の先生のお点前は鮮やか。誰もが心を奪われることでしょう。

空間に足を踏み入れると、その狭さに驚く「さかい待庵」は、ほのかに光が入る程度の明るさで質素な造りが印象的です。

現代によみがえる「さかい待庵」

同施設で一番の見どころを挙げるとするなら「さかい待庵」です。こちらは利休が作った茶室のなかで唯一現存する茶室・国宝「妙喜庵待庵」を創建当初の姿に復元したもの。わずか2畳と狭小でありながら、空間を少しでも広く見せる工夫が施され、壁や柱の仕様など細部に至るまで利休の強いこだわりが表現されています。茶の湯に必要なもの以外すべてを削ぎ落とした中に静かに身を置くと、五感が凛と研ぎ澄まされるよう。利休が追い求めた世界観をぜひ体感してみてください。見学は申込制。案内人による丁寧な解説で、より知識を深めることもできます。

さかい利晶の杜のみどころ

茶器や陶磁器の展示

堺環濠都市遺跡から出土した茶器や陶磁器なども展示され、見ごたえがあります。

茶の湯の変遷

千利休の壮年期と晩年期の茶室(床部分)を想定した比較展示。その違いは一目瞭然です。

茶の湯体験施設

日替わりで表千家、裏千家、武者小路千家の先生のお点前を間近に見ることができます。

立礼呈茶の生菓子

季節に応じて変わるお菓子は、地元堺で選りすぐりの和菓子店が腕によりをかけて作っています。この日は、寄せ梅をいただきました。

DATA:

さかい利晶の杜

大阪府堺市堺区宿院町西2-1-1

TEL 072-260-4386

観覧時間 9:00~18:00(茶の湯体験施設 10:00~17:00)

休館日 第3火曜日(祝日の場合は翌日)、年末年始

観覧料 さかい待庵特別観覧セット(申込制.展示観覧・立礼呈茶含む):大人1,000円、高校生800円、中学生以下500円
その他観覧料金等は、公式サイトでご確認ください。

URL http://www.sakai-rishonomori.com

(2016年2月 現在)

さかい利晶の杜 からのメッセージ

当ミュージアムは3月20日で開館1周年を迎えました。
4月はそれを記念した企画展を開催していますので、ぜひお立ち寄りください。

【取材レポート】
外国人観光客や修学旅行生たちも多く訪れるという「さかい利晶の杜」。取材におじゃました日も近郊の小学校から社会科見学のため訪れた生徒たちでにぎわい、やや緊張した面持ちで茶の湯体験を楽しんでいました。本格的にお茶のお稽古を始めたいと思っていても、なかなか忙しくて…という人は、一度こちらで雰囲気を味わってみるのもいいかもしれませんね。