グリル一平
神戸は関西の洋食文化発祥の地。明治時代より港町として繁栄を遂げ、異文化交流の中で日本独自に進化した洋食は、モダンを好む人々の間に浸透しました。通りを歩くと、今も多くの老舗店が看板を掲げ、長い歴史の中で培った味を届けています。その一軒であるグリル一平を訪ねました。
本店の味を引き継ぐ元町店、三宮店は、基本のレシピはあっても店舗ごとの客層に合う味付けに変更しているそう。
厨房にオーブンはなく、6つのガスコンロがフル稼働。調理は機械任せにせず、人の勘を頼るのがポリシー。
「厨房や調理道具は常にきれいに整っていること。手入れが行き届いていないと味も雑になります」と山本さん。十数年も使い込んだ鍋はすっかり底が薄くなり、丸く変形してしまったものもあります。
グリル一平のおすすめ
オムライス
とてもシンプルな昔懐かしい味。この一皿を求めて遠方から足を運ぶ人もたくさん。しっかりと巻かれた卵と空気を含んだライスが口の中でほろりとほどけて絶品。
ハンバーグ・ステーキ
ジューシーなハンバーグにデミグラスソースがたっぷり。アツアツの鉄板からふくよかな香りが立ち上ります。ハート型の目玉焼きがかわいらしい。
スパゲティ・イタリアン
山本さんいわく「うちのパスタはナイデンテ」。アルデンテとは対極にあるうどんのようにやわらかい麺が独特。濃いめの味付けは、ごはんにも合います。
DATA:
グリル一平 新開地本店
兵庫県神戸市兵庫区新開地2-5-5-203
TEL 078-575-2073
営業時間 11:30~21:00
定休日 毎週木曜(祝日時は水曜振替)と毎月第3水曜
(2016年4月 現在)
【取材レポート】
創業者である山本さんの祖母が、神戸でトップクラスのシェフたちを集め、洋食店をオープンさせたのがグリル一平の始まり。当時の洋食は高級料理で、記念日やハレの日に食べるものでした。そのなかでテーブル100席、座敷、VIP客専用のお忍び階段まで備えた同店は他と一線を画す一流店。今ではよく目にするステーキを鉄板に乗せて運ぶスタイルも、料理に特別感をもたせるためにと、グリル一平で生み出されました。阪神淡路大震災では店舗が大きなダメージを受けシェフたちも去り、一時は閉店に追い込まれたことも。そんな窮地を救ったのは常連客でした。コンテナ5つを淡路島から運んでくれ、営業を再開させることができたそう。長い歴史の中で多くの人々に支えられてきた、今も変わらない味があります。