純ロシア料理 バラライカ

神戸は狭いエリアに多国籍文化が密集する街。特にロシアとは昔から結び付きが深く、神戸発祥の洋菓子店「ゴンチャロフ」や「モロゾフ」も創業者はロシア人。かつてはロシア人が多く住み、専門料理店も珍しくありませんでした。そんな神戸で最も古い一軒が「純ロシア料理 バラライカ」です。

店内にはロシアの民芸品マトリョーシカがたくさん飾ってあり、お客さんをにぎやかに出迎えてくれます。阪神淡路大震災後、現在の場所と移転してからも人気は衰えません。

本場のロシア料理を日本でも

創業65年。ロシア料理の名店として知られるバラライカは、戦後間もない神戸で産声をあげました。初代は現オーナーシェフ・田部洋一さんの祖母。ハルビン在住中に知人のロシア人から教わった家庭の味を持ち帰り、専門料理店としてオープンさせたのが始まりです。

戦前から西洋の食文化に触れてきた神戸。ロシア料理もすんなり受け入れられると思っていたところ、日本人は「敵国の名を掲げ、いったい何を食べさせる店なのか」と最初は懐疑的だったそう。その一方で、神戸に住んでいたロシア人には評判が良く、祖国の味だと気に入り、足しげく通うお客さんもいたとか。

日本人に味をわかってもらうためにはとにかく食べてもらうしかないと、積極的にイベントに出店。初めて口にした人にもどこか懐かしさを感じさせる料理に、少しずつ思いを寄せる人が増えていきました。

ボルシはウクライナ生まれの料理。ウクライナでは大量に採れるビーツを加えたことからスープが赤くなりました。

意外にもシンプルでヘルシー

阪神淡路大震災で一度は大きなダメージを受けながらも、現在の場所に移転し復活。創業当時のまま変わることのないレシピが3代に渡って受け継がれ今に至ります。バラライカの料理はロシア家庭の味に忠実。伝統的な調理法とシンプルな味付けで素材の持ち味を引き出します。「味のベースは塩とコショウで、食材はタマネギ、キャベツ、ニンジン、トマトなど、ごく一般的で手に入りやすいものばかり。ロシア料理は脂っぽいというイメージを持たれている人もいらっしゃいますが、野菜をたっぷりと使っているのでかなりヘルシーなんです」と田部さん。

本場では好まれるディルなどの香草は、日本人の舌に合うようあえて控えめ。田部さんが作る素朴で気取りのない味を求め、長年通う常連客もいます。

バラライカこだわりのサワークリーム。ボルシの色が白くなるほど加えるロシア人客もいるそうです。また、ロシア人はピロシキを軽食やおやつとして頬張ります。具はさまざまで、甘く煮たリンゴを包んだものも人気。

こだわりの自家製サワークリーム

ロシアではさまざまな料理に使われているサワークリーム。本場の味を出すのに欠かせない食材です。バラライカのサワークリームは自家製のものを使用。生クリームにケフィア菌を混ぜると、1~2日でまじりっけのないクリーミーな味が完成します。同店自慢のロシアのスープ「ボルシ」にひとさじ加えるだけで印象が一変。すっきりとした一皿がまろやかでコク深い味わいになります。

人気のピロシキにもオリジナルの食材が。「ピロシキは地域によって味や見た目が違います。当店のレシピはハルピンで学んだということもあって、春雨が入っているのが特徴です」。さっそく揚げ立てを試食。生地はふんわりと脂っぽさがなく、中には具材がたっぷり。ボリュームがありながらも1個ぺろりといただけます。寒さが増してくるこれからの季節、ほっこりとやさしい味のロシア料理で体を温めませんか。

バラライカのおすすめ

ボルシ

6時間以上かけて煮込む牛骨スープがベース。具のバラ肉は極力脂を落し、さっぱりとした味わいに。口の中でほろほろとほどけるほどやわらかです。

ピロシキ

パン生地にひき肉やタマネギ、春雨などの具を包んで揚げたもの。冷めると味が馴染み、しっとりとしたおいしさです。テイクアウトも可。

カツレータ イ グロヴィツイ

ロシア風ハンバーグとロールキャベツ。つなぎを加えないハンバーグはしっかりとした歯ごたえ。ロールキャベツの具には米が入りボリューム満点。

DATA:

純ロシア料理 バラライカ

兵庫県神戸市中央区山手通1-22-13ヒルサイドテラスビル3F

TEL 078-291-0022

営業時間 11:30~14:00 17:30~21:00 (火曜休み)

URL http://www.balalaika.jp/

(2016年9月 現在)

バラライカ からのメッセージ

野菜をふんだんに使ったスープなどはさっぱりと口当たりが良く、高い栄養価を誇ります。ロシア料理は寒い土地のものというイメージからか夏は嫌厭されますが、体調不良のときや食欲の落ちる夏場にもぴったり。年中味わえる料理として、ぜひ親しんでください。

【取材レポート】
ロシアの赤いスープ「ボルシチ」。バラライカではメニューに「ボルシ」と書かれています。田部さんによると、実はボルシチと呼ぶのは日本人だけ。発音の仕方の違いで、ボルシが一般的な呼び方なんだそう。現地のレストランで注文するときは、ボルシチと言うとロシア人には通じないかもしれないのでご注意を。