本家 きむらや
明石市民の台所・魚の棚は、瀬戸内で獲れた旬の魚や乾物を扱う商店が軒を連ねています。今年もそろそろ年末の売り出しが始まるころ。威勢の良い声が飛び交い、通りは買い物客であふれます。そんな活気ある街を象徴するような、賑わいの絶えない一軒を訪ねました。
オープン前から行列ができ、多いときは1日400枚焼くことも。道に面したガラス窓からは焼く様子がのぞけます。店内のテーブルやイスなどは昔のまま。お客さんから「変わらんといてや」と念押しされているとか。
道南産の立派な一枚昆布。一度うま味を出すと捨ててしまうそうでもったいないと取りに来るご近所さんがいるとか。熱伝導に優れた銅製の焼き鍋で焼くのが明石焼の鉄則。きむらやではこまめに手入れをし、30年40年と使い続けています。
焼き上った明石焼は板に乗せてテーブルへ。「新聞紙に包んでいたころは文字が明石焼に移り、それも味わいだった」と4代目店主の衣川幸子さん。付けだしは炊き込みご飯や鍋にも応用できて万能。だしのファンも多く、一度に大量に買う人もいるそうです。
本家 きむらやのおすすめ
明石焼
きむらやの明石焼は1枚20個と他店よりやや多め。インターネットからも購入でき、家庭で店の味が楽しめます。
おでん
いりこと昆布でしっかりめに取っただしは、創業以来継ぎ足しで守ってきたもの。阪神淡路大震災で一度はダメになりながらも復活しました。
DATA:
本家 きむらや
兵庫県明石市鍛冶屋町5-23
TEL 078-911-8320
営業時間 平日 10:00~17:30頃
土・日・祝 9:00~17:30頃(仕込み分がなくなり次第終了)
月曜休み(月1回不定休で火曜も休み。詳細はHPにて)
URL http://honke-kimuraya.com/
(2016年10月 現在)
【取材レポート】
一歩中に入ると、まるで昭和のまま時が止まってしまったかのような店内。昔はおかずが並んでいたガラスのショーケースや味わいを深めたテーブルやイスが、何ともノスタルジックです。店構えやしつらえを創業から変えずにいるのは、お客さんからの強い要望から。「ドアの建て付けが悪くなって仕方なく新調したら、なんで変えてもたんやと怒られて。お客さんにはそれぞれ、うちの店との深い思い出がある。それを触ったらあかんのやと思いました」。店の歴史をお客さんから教わることも多いという幸子さん。これからも温かいもてなしを大切に愛され続ける一軒でありたいと語ってくれました。