出入橋きんつば屋

焼き立てはもちろん冷めても美味。もっちり、しっとりの食感と控えめな甘さが人気の「出入橋きんつば屋」のきんつば。手でつまめる気軽さと小腹を満たすのにぴったりなサイズから、関西人の手土産や差し入れとしても重宝されています。

創業時から変わらない場所で営業を続けている出入橋きんつば屋。出入橋は店が立つ場所の地名にちなんで(画像上)。店主が鉄板の上できんつばを焼く技は、カメラのシャッターが追いつかないほどのスピードです(画像下)。

サラリーマンも行列をなす甘味

大阪のオフィス街の一角に、昔ながらの佇まいを残す小さな甘味処があります。昭和5年創業の「出入橋きんつば屋」。屋号の通り、名物は一個ずつ丁寧に手焼きするきんつば。多い時は1日2000個以上売れることもある銘菓です。開店と同時にひっきりなしにお客さんが訪れ、20個、30個とまとめ買いをする中にはサラリーマンらしき人も。できたてを1個から買えるとあって、スーツ姿でふらりと立ち寄る男性も珍しくありません。

「バブルのころは、女性へのお返しにとホワイトデーにずらーっと行列ができてました。1人で大量に買われるので店は大忙し。40分待ちですよと伝えても、待ってますわーってね。仕事は大丈夫かいなと思てました」(笑)。平成のにぎわいを懐かしく語るのは三代目店主です。

時間をかけて炊き上げたあんを一晩寝かせて落ち着かせたのち、四角に切り揃えます(画像上)。もっちりとした衣の材料は小麦粉と水のみ。一辺ずつ付けて、1個ずつ丁寧に焼いていきます(画像下)。

初代譲りの手焼きの技を守る

「きんつばを売り始めたのは、初代にあたる祖父。店のそばに昔は運河があって、荷揚げをしていた労働者のおやつとして作っていました。甘いもんがまだそないにない時やったから、珍しがられたんでしょう。今もサラリーマンの人が買いに来てくれるのは、当時の名残なんかなと思います」。

材料や作り方は創業時から一切変わらず。北海道産の小豆を上白糖で炊き、寒天を加えて冷やし固め、四角に切り揃えます。あんに小麦粉と水のみで作った衣をまとわせると、年季の入った鉄板の上に手際よく乗せ、一辺ずつガス火で焼いていきます。

「焼くのにコツはありませんけど、衣は薄すぎず厚すぎずつけて、その日のうちに使い切ってしまうようにしてますね。日持ちさせるようなもんは入っていないから、当日中に食べてもらわんとあかんのです」。

さらしの布を巾着状にし、中に洗ったもち米を入れて炊き上げるとしがらぎの完成。あんときな粉を合わせて(画像上)。わらび餅づくりは三代目のお母さんの仕事。しっかりと練り上げるのはかなりの重労働とか(画像下)。

喫茶スペースでは出来立てを堪能

店の奥には喫茶スペースもあり、温かいきんつばをいただくことができます。もっちりとした衣の中には甘さを抑えたあんがぎっしり。小ぶりなので1皿3個がするすると胃袋に収まります。きんつば以外の喫茶メニューは季節に応じて2度入れ替わり、5〜9月までは夏場限定のしがらぎが登場。洗ったもち米を筒状のさらし袋に入れて炊き、冷蔵庫で冷やしてタコ糸で切り、あんこときな粉をまぶしたもので、昔はポピュラーなおやつだったそうです。

「おはぎに似てるでしょ。冷たくて夏場はよく出るんですよ」とは三代目のお母さん。喫茶で出すわらび餅を早朝から仕込んだり、時はきんつばを焼いたりと、店を陰で支えます。「うちはずっと家族で切り盛りしてきたことが強みやね。店舗を広げると味がブレるし、人任せにすると味は落ちてしまう。来てくれるお客さんを思うと手は抜かれへんね」
このまっすぐなスタイルが、令和の時代も色褪せず大阪人に愛される秘訣なのかもしれません。

出入橋きんつば屋のおすすめ

きんつば

あっさりとしたあんともっちりとした衣が良いバランス。きんつばを買い求める人で行列ができることもあり、著名人にもファンが多くいます。

しがらぎ

ユニークな作り方の庶民派おやつ。きんつばに次いで夏場に人気のイートインメニューです。

わらび餅

お母さんが朝4時過ぎから手作りしているわらび餅。大きくカットされ、食べ応えは満点です。

DATA:

出入橋きんつば屋

大阪府大阪市北区堂島3−4−10

TEL 06−6451−3819

営業時間 月曜〜金曜 10:00〜19:00
     土曜 10:00〜18:00

定休日  日曜・祝日

出入橋きんつば屋 からのメッセージ

当店のきんつばは昔ながらの庶民派おやつ。世代や性別を問わず食べていただける味に仕上げています。冷めてもおいしさと食感はそのまま。ぜひお土産にもどうぞ。

【取材レポート】

あんみつやところてん、かき氷など、夏は涼やかなメニューが並ぶ喫茶。昭和が香る店内では、落ち着いて甘味をいただくことができます。冬場はぜんざいやあべかわ餅、磯辺巻きなどが人気。初代のころには今の倍ほどメニューがあり、葛餅やおはぎなども作っていたとか。気になる味がまだまだあったので、ぜひ再訪したいと思います。