グローリー株式会社
通貨処理機のパイオニアとして、国内外での活躍が目覚ましい「グローリー株式会社」。 社員の健康管理と社員食堂の渋滞緩和を目的として開発されたオリジナルの社員食堂システムについてお話を伺いました。
グローリー株式会社
創業 1918年
本社 兵庫県姫路市下手野1-3-1
従業員数 3,349名(2014年3月末時点)
1918年、電球の製造装置を修理する工場(国栄機械製作所)として事業をスタート。1950年に国産初の硬貨計数機を開発し、大蔵省造幣局へ納めたことをきっかけに、通貨処理事業への取り組みを開始。その後、硬貨計算機や硬貨自動包装機、千円紙幣両替機などの国産1号製品を誕生させ、通貨処理機のパイオニアとして地位を確立する。また、たばこなどの自動販売機を日本初の製品化に成功させたことでも知られている。現在は世界100か国以上で同社製品が活躍中。銀行のオープン出納システム、窓口用入出金機、スーパーなどで利用されているレジつり銭機などは、国内で7割以上のシェアを誇る(※同社調べ)。
ランチタイムを支える自社システム
チャイムが鳴ると社員が続々と集まり始める
広大な敷地に鳴り響くチャイムの音。11時30分、今日もグローリーのにぎやかなランチタイムが始まります。おなかを空かせた社員たちが、やや小走り気味にウキウキと向かう先は、まるで体育館のように広い社員食堂。
トレーを手にすると、今日はどれにしようかと小鉢を前に迷っている人がいたり、一目散にざるそばを取りにいく人がいたり。人気のライスバラエティコーナーにはいつの間にか行列が。ほんの少し前まで静かだった食堂内は活気でいっぱい。用意された450人分のイスとテーブルが、あれよあれよという間に埋まっていきます。
食欲をそそるおいしい香りと笑顔が広がる社員食堂
ランチタイムは部門ごとに45分で区切られた3シフト制。1シフト目は管理部門、2シフト目は製造部門、3シフト目は開発部門が利用し、食堂がクローズする14時までにぎわいが続きます。
1日にだいたい1,100人前後が利用するという大バコ社員食堂。限られた昼食時間を有意義に使えるよう押し寄せる人波をスムーズ化し、また社員食堂を利用することで社員一人一人の健康意識を向上させていくことを目的として、2008年食堂設備のリニューアルに併せ導入されたシステムがあります。
社員の健康意識改革に一役
グローリーが開発した社員食堂向けオートレジスター
「以前の社員食堂は厨房設備が老朽化し、そろそろ改築しないといけないという話が出ていました。社員食堂システムは弊社の事業展開の一つだったので、新しく社員食堂を建て替えるのをきっかけに、製品を置いてライブショールームとしても活用していこうということになったんです。そのときに導入したのが、PSA シリーズ。
これは、トレーをオートレジスターに置くだけで代金が自動で精算され、IDカードや電子マネーなどで決済ができるシステムです。社員数の多い会社の社員食堂は会計時に渋滞するのが常。それを解消するためにPSAシリーズは生まれました。また、ディスプレイ画面には精算額と一緒に食べたものの栄養素情報を表示することができ、これがPSAシリーズの大きな特長と言えます」。そう話すのは、人事部の上山友佳子さん。
新しい社員食堂が完成する2008年は、ちょうどメタボリック検診が始まった年でもありました。世の中の食への視線が「ヘルシー」や「健康志向」に向けられるなか、同社でも、社員一人一人の健やかな体づくりを目指した取り組みは課題の一つ。社員食堂の利用が少しでも健康意識の向上にもつながればと、期待を込めてPSAシリーズの運用を始めることとなりました。
食べたものの栄養素情報を瞬時に表示
トレーを置き、カードをかざすだけの簡単操作が魅力
PSAシリーズのオートレジスターは、それぞれの食器の裏に取り付けられたICタグがカギを握っています。ICタグにそのメニューの価格や栄養素情報が書き込まれていて、トレーを置くと瞬時に読み取りを行います。
ディスプレイに表示される栄養情報の画面パターンは、塩分とエネルギーを示すもの、タンパク質や炭水化物など栄養素6項目と食事バランスガイドを表すもの、栄養素6項目と栄養バランスをレーダーチャートで表示するものがあり、同社の社員食堂では、自分の欲しい情報が搭載されているオートレジを選ぶことも可能。レシートプリンターが接続されているので、表示された栄養素情報をプリントアウトし、持ち帰ることもできます。
栄養素情報のプリントアウトもスマートにさっと行える
印字された用紙にも、メニューごとの栄養素や栄養価の合計、1日の基本摂取量に対する各栄養価の充足率など、体づくりのキーワードとなる情報が一目瞭然。これなら誰でも気軽に体調管理ができ、今日のカロリーはどうかな?食べ過ぎていないかな?と自分のペースで楽しみながら続けられそうです。
給食委員会が社員食堂の問題を解消
同社では社員食堂のリニューアルをきっかけに「給食委員会」を立ち上げました。メンバー構成は、社員食堂をよく利用し、嗜好、年齢、食べる時間帯が異なる社員と給食会社、人事部。3か月に1度の会議では、利用する社員の声を細かく聞き取ったうえで、問題点や改善点などを話し合っています。
なかでもよく議題に上がるのがメニューの中身について。「ちょっと味が濃すぎるとか、量が少ないとか、個人の嗜好の部分も大きくて、意見を精査し、まとめていく作業もけっこう大変です。
体づくりを意識した、見た目良し、味良しのメニュー
でもそのなかに、なるほどと気づかせてくれる鋭い意見があったりして、社員食堂をより良く発展させていくための参考にさせてもらっています。
若手社員からはとにかくボリュームのあるものが食べたいという声があり、ベテラン社員からはヘルシーなのがいいという真逆の意見が出てくるときもあって、どちらの意見を優先しようか迷うこともあります。そんなときは給食会社さんにお願いして、全体の栄養やカロリーバランスを見ながら献立を工夫してもらったりしています」と、委員会メンバーの一人でもある上山さんは、会議の裏話をチラリ。
管理部門と製造部門がある同社では、ヘルシー系メニューとボリューム系メニューのどちらも用意しなければならず、たとえばハイカロリーなメインをチョイスしても、小鉢で総カロリーが抑えられるようにと、給食会社の協力を得てメニューの立案にはかなり力を入れている様子。定番メニュー以外は6週サイクル内で同じ組み合わせのものが登場しないように気を配るなど、細やかな心遣いも社員食堂の人気を支えています。
食堂内はスムーズな動線を考えてコーナーを配置
このようにハード面、ソフト面ともに大幅な改善を加えたことで、これまでの社員食堂へのマイナスイメージを払拭。「あまりおいしくない」「環境がイマイチ」という声が「温かくておいしい」「もっと利用したい」に変化し、社員の満足度もグンとアップしました。
TABLE FOR TWOで低カロリー食を意識づけ
体づくりを意識した、見た目良し、味良しのメニュー
同社では2011年からTABLE FOR TWO(テーブル・フォー・ツー)プログラムにも参加しています。これは、世界で深刻化する食の不均衡を解消するために2007年に日本で始まった活動。低カロリーなメニューを食べると、自動的に代金の一部(20円)が世界食糧計画などを通して開発途上国の子供たちへ学校給食をプレゼントすることができるというもので、現在参加している企業や団体は650以上あります。
同社では、メイン、副菜などを組み合わせて1食分を約730キロカロリーに抑えたメニューサンプルを食堂内に用意して適正カロリーの目安とし、また、TFT対象メニューを食べると活動に参加できる仕組みになっています。メニューサンプルどおり食べればおのずとカロリー摂取量が抑えられるため、健康管理に疎い社員でも気軽に取り組めると好評なんだそう。
食堂内はスムーズな動線を考えてコーナーを配置
上山さんいわく「TABLE FOR TWOプログラムのメニューサンプルを目安に、自分がチョイスした今日のメニューはちょっとカロリーが高すぎるかな、などと見直すきっかけにもなっています」。各皿の横に置かれたメニュープレートに塩分やカロリーを明記しているのも、栄養バランスの良い食事を意識づける取り組みの一環。皿を取るときに表記を見ながら頭の中でざっくりと計算し、自分なりにコントロールしている社員も多いそう。
「美肌効果や貧血予防など、女性目線の一言が添えられたポップが貼ってあるメニュープレートもあって、自然と目に留まっちゃいます」と言うのは、広報部の山崎佐妃子さん。低カロリーなおかずを詰めた日替わり弁当も、健康に留意したいけれどメニュー選びを面倒くさがる男性社員に好評とか。給食委員会が行う聞き取り調査では、ヘルシーメニューをもっと増やしてほしいという声も少しずつ高まってきて、委員会メンバーたちは、こうした地道な積み重ねが社員の健康意識向上にも一役買っていると実感しているようです。
PSAシリーズのさらなる可能性を求めて
トレーを置き、カードをかざすだけの簡単操作が魅力
「PSAシリーズは十分な時間と苦労を重ねた末にようやく完成しました。特に大変だったのが、食器の裏に貼り付けたICチップの精度強化。当初のチップは職人さんによる手作り品で量産性が悪く、また食器を重ねると読み取れないという問題もありました。そこで、ICチップや接着方法などに改良を加えながら品質を向上させてきました。電子レンジで温めて取れたこともありましたが、これはどうしようもありませんから…」などと開発の裏側を語ってくれた藤田さん。
さまざまな努力が実を結び、PSAシリーズは現在、工場を持つ大手メーカー、マスコミ関係、大学などでも導入。競合システムが次々と登場していくなかにあって、その国内シェアは約55%を占めるそうです(※同社調べ)。
食の安全を心がけ、衛生管理にも十分に配慮したシステム
利用率が高まる一方で、もっとこうしてほしいというシステムへの要望も少なくありません。「たとえばパソコンやスマホのアプリと連動させて、メタボ気味な社員にはこういったメニューがおすすめですよとアナウンスできたり、健康診断の結果をメニュー選びのときに反映できるようにしたり。もっと健康面とリンクさせた機能を充実させたいですね。今後は、システム活用の幅をより一層広げるために、長期にわたって保存した大量データを即時処理する技術が課題になってきます」と、上山さんは意欲的に語ってくれました。
社員食堂でインタビュー「わが社の食堂、ココがお気に入り!」
明るく開放的な食堂内はいつも笑顔の花が満開。同僚たちと楽しいランチタイムを過ごす社員の方に、社員食堂の魅力について聞きました。
低カロリーを意識したメニューは社員の評判も上々
「体調と相談しながらメニューを選んでいます」
福田由佳子さん(品質・環境推進部) 社員食堂はいつも利用しています。今日のメニューは鰆の西京焼きに青菜のおひたし、味噌汁にごはん。このシステムになってから、日々の体調と相談しながらメニューを選ぶようになりました。精算時に栄養情報が表示されるのでそれを参考にしながら、今日お肉を食べたら明日はお魚にしようかなとか、最近炭水化物を摂りすぎているからサラダを多く食べようとか、やっぱり意識してしまいますよ。あと、社員食堂では自分では思いつかないメニューが登場することもあるので、食材の組み合わせとかを家で料理するときの参考にしています。
「自然とヘルシー志向になりました」
大蔦拓郎さん(財務部) 2年前に東京本部から本社に異動してきました。東京本部には社員食堂がないので、外食が主。揚げ物ばかり食べていましたが、こちらに来てほぼ毎日社員食堂を利用しているうちにいつの間にかヘルシー志向になった気がしています。今までは食べたもののカロリーや自分の健康のことなど気にしたことがなかったんですが、精算時に栄養バランスやカロリーが表示されると、気になって見ちゃいますよね。なんとなく魚を多く食べるようになったのはこのシステムの影響かなと。何より、いつも温かいものが食べられるのもありがたいですよ。
社員食堂ブームとも言える昨今。そのスタイルも多様化してきています。社員食堂システムのさらなる活性化に向けて、グローリーの歩みが止まることはありません。